01.あまやか

硝子の皿に盛られた熟れた果実
萌黄色の頬をあかく染めて
爛れて腐り落ちる寸前のかおり

 

02.欲望

私の心の奥底には眠った欲望があります
私はその欲に薄々気づいていますが
気づいてはいけないものなのかもしれません

なぜって私が私の欲を認めると
それは私があたかも愛されていなかったかのような
私のまわりの人を否定することになるから

それでも湿った欲望は
朽ちかけてもなお心の奥底に

 

03.稚い

おさないものはかわいらしい

ちいさな 手
ちいさな 足
おおきな 目
おおきな 口

まことにかわいらしいはずなのに
わたしはは時折憎悪する

幼かった頃の私にはなかったものを
もつ子供たちに嫉妬している

 

04.万華鏡

カラカラカラカラ
風車がまわる

ザザザザザザ
粒子が巻き上がる

クルクルクルクル
めまぐるしく世界は変わる

眩暈をおぼえるような
色とりどりの万華鏡

 

05.搖蕩う

なまぬるいプールのなかに

ぷかりと浮いた白い躰

いきているの?
しんでいるの?

ううん、
どちらでもないの

わたし最初から生きてなんかいなかった
だから死んでもいないよ

なまぬるいプールのなかに

白いボウルがひとつ