私の知っている限りで、一番濃いきょうだいは、
長男、次男、三男、長女、末弟が、バイ、ノーマル、ホモ、腐女子、二次元萌えというバラバラの個性をもっている上に、親がばらばらで血が繋がってない家庭である。
当然私はここの腐女子の女の子がお友達なわけだが、彼女の人生はとても波乱万丈。いつか物語で「実話です」と書いてみたいが、既に上記の兄弟設定からしてあまりに奇抜なため、「お話だからってこの設定はなしだろ」と言われるのが関の山な気がする。
彼女の家庭はお兄ちゃんたちが「妹命!」で、彼氏を連れていった日には木刀を持ってきて「決闘だ!」と戦いはじめる。あまりにその戦いが終わりを迎えなかったために、彼女が最後は木刀を持ってふたりを成敗して止める。あるときは兄妹喧嘩で真夜中にチキンランをする。お食事を作るのは長男に惚れているオカマのお姉さん。
聞けば聞くほど、なんというネタ兄弟と思ってしまう。
その兄弟に比べればうちの姉妹なんて、濃いうちに入らないと思うわけだが、その友人に言わせれば「あなたの姉妹も十分濃いですよ」というやつらしい。
そんなに濃いとは思わないけれども、少しばかりネタになりそうな紹介のしかたをしようと思う。
妹1「M」
「俺は不良じゃねえ、不良品なんだよ」
姉が欠陥製品を自称するならば、妹は不良品を自称するさそり座のB型。
レストランに入ると煙草も吸わないのに喫煙席に通される。道を歩くと男子中学生が道を開け、母親がわが子を自分の影に隠す。男と間違えられることもある。
今でこそ「俺」とは言わなくなったが、一人称が三人バラバラのほうが見分けがつくので彼女はいまだに文章上は俺女のままだ。
Mさんを理解するためには少なくとも十年かかると思う。M語を理解し、Mの世界観を熟知し、彼女のボキャブラリの少なさをさっとカバーせねばならない。
とはいえ、ボキャブラリは少なくても、それを最大限使って表現するのがMさんだ。
十分間の中で三つも幽霊ネタのストーリーを思いついたり、「ピノキオはホラーだ。なぜなら〜」と語り始めたりする。およそ普通の人が思いつく範囲でない内容なので、たまに日記に書いている。
彼女が普段何を考えているのかよくわからないが、私が「飲み物おごってよ」とドラッグストアで言ったときには、粉ミルク売り場に私を引き連れていって「好きなの選べよ」と言った。
また、父親がMさんの絵のデータを全部消してやると言ったときは、父親に日替わりで意地悪をする例を一時間に渡って挙げ続けた。おそらく一ヶ月分くらい毎日「これは……」と思うような仕返しを言っていたと思う。父親はせいぜい三日分だった。
たぶん敵に回すとうちの家の中で一番恐ろしいのはMさんだ。
妹2「ニノ」
「あたし、スナフキンと結婚する」
その男はやめておけと姉ふたりが彼女を説得しようと試みたところ、「じゃあアカギくんかギンコさんにする」と言った。何故二次元……という突っ込みの前に、どうしてそんなふらふらと消えてしまいそうな男ばかり選ぶのだろうということが気になる。
そんなニノさんスキルは「いい加減」。こちらが煮詰めておくように言ったことでもきれいさっぱり忘れている。
夜中になると音楽を聴きながら踊っている。「ジャンプするな」と言っているのに、ご近所の迷惑顧みずにジャンプする。地獄の料理人という肩書きがあるように、ありえないひどい料理をよく作る。
それについて私が注意すると「花南は怒ってばかりだ」と言い、そして口癖は「大丈夫、いけるいける!」である。
彼女の行動がいけていたためしがない。だけどノリと勢いだけは信じられないほど陽気である。
きっと彼女は南米に生まれるべきだったのだ。だったら踊っていても怒られないし、むしろ人気者になれたのにと思う。
上の紹介でわかるだろうか。妹たちはどちらも、筋金入りのトラブルメーカーだ。
Mさんがガスを漏らしていることに気づかず、母親が火をつけた瞬間火柱と共に家が揺れたことがある。彼女が普通に日直の昨日の日記で話したら、みんなが青ざめたらしい。
一方ニノさんのほうは、小さい頃おやつが大好きな子だった。
だけど貧乏な我が家ではおやつを買うお金がない、仕方なく彼女は、私のお財布からお金を持っていっておやつを買った。
そこまでなら「盗んだ」だけだが、彼女のすごいところは、おつりを私に直接返しにくるところだ。
500円が50円になってかえってきたので、私が悲しそうに
「なんで勝手に使うかな」
と言うと、彼女は不思議そうな顔をして
「50円返したよ?」
と言ってきた。ニノさんにとって500円も50円もいっしょである。全然悪いことをしたと思っていない。
ニノさんとMさんは小さい頃仲が悪かった。だけど部屋はいっしょの部屋だった。だからMさんはニノさんを追い出すために自分が部屋にいるとき、扉につっかえ棒をはめていた。
ニノさんはそれに激怒して、五寸釘で隣の和室から新しい道を作ろうと試みた。和室の壁が深く抉られていることに親が気づいたのは五センチばかり彼女が根性で掘ったあとである。
それを見て「馬鹿だ」と笑っていたMさん、ある日自分が外にいるときにつっかえ棒が落ちてきて、自分も部屋から閉め出される。
結局父親が天井に穴を開けて、そこから部屋に入って部屋の扉を開けた。
ニノさんは和室からの道を作ることには失敗したが、Mさんの失敗によって天井に道を作ることに成功した。
以下略。
彼女たちの名誉のためにこれ以上不名誉なことは書かないが、いちいちやることが過激な妹たちである。
思えば今は相当大人しくなったものだと思う。
Mもニノも大人になったんだね、と言ってやりたいところだが、Mさんは「Mが大きくなっただけ」だし、ニノさんは「何歳?」と聞くと「十六歳」と真顔で答える二十一歳だ。
私自身? よく「花南は中二病だ」と言われます。
精神的にいつまでも若々しいことはいいことだよ! とまとめておく。 |