(15)唯一無二

 唯一無二の自分とか、唯一無二の友達とか、唯一無二とつければなんとなく価値がありそうな気がしてくる。しかし唯一無二が世の中に濫れるほどあるのであれば、唯一無二はそう価値がないのかもしれない。
「一点もの!」というアクセサリーがいっぱいあったとして、どれも一点ものならばどれを買っても同じような気がするのだ。

 そんなわけで、私はレアさにはあまり興味がない。
  どちらかといえば、他に同じものがないことより、同じでもいいからセンスのいいものが欲しいと思う。
  私らしさとかは全然興味がない。テンプレートな生き方でもいいから、センスのある生き方がしたいと思う。
  どうせ人間は生れてきたときから個体が違う唯一無二なのだから、せめて生き方くらいは自由に選べるほうがいいじゃあないかって気がするのだ。「個性的であれ」なんて言われたら、それこそいきなり自分らしさがぎこちなくなりそうな気がする。

 そう思うのに、私ときたら悪目立ちするのだ。
  あまり私のような思考の仕方をする人はいないらしい。だいたいみんな唯一無二を大切にしている。
  世界にひとりしかいない自分を大切にしている。
  私は自分が個性的であることよりも、私が私であることのほうが大切だ。
  言っていることがさっきと違うと言われるだろうか。言い方を変えるとだ、私は人が考える「私らしさ」や「個性」なんてどうでもいいと言っているのである。自分がなりたい自分になっていくことのほうがずっと大切だ。
  誰かに「パクるな」とか「盗作だ」と言われたとしても、私は私がオリジナルであると胸を張って言える。そもそもモノカキなんてパクってなんぼの世界だ。いいところはどんどん真似して、悪いところを切り捨てていけばいい。
  人間は癖の出る生き物だから、まったく同じ複製をしようとしたってどうしても自分の色が出る。
  だから私は生れたときから今に至るまでオリジナルなのだ。
  それが私の唯一無二であって、それに価値がつこうがつかなかろうが、まったくどうでもいいと感じる