(17)涙の理由

 悲しいから泣くわけではない、嬉しいから泣くのだ。
  ……そんな展開が多かったらどんなによかろうと思う。実際の私は悲しいから泣くわけでもなく、嬉しいから泣くわけでもなく、だいたいは悔しいから泣いている。
  涙腺を引き締める方法を知りたいとはあまり思わない。どちらかといえば、綺麗に泣ける方法が知りたい。綺麗な感情で泣きたいと思うのだ。

 昔に比べれば映画や小説を読んで泣く回数が増えたと思う。
  だけど泣くのは今もあまり得意というわけではない。たとえかたが汚いが、我慢に我慢した尿意のあとのおもらしのような泣き方なのだ。耐えられずにやっちまった、のような印象だ。
  言っている意味がわかっていただけただろうか。私の泣き方は汚い上に醜いのである。

 感情に蓋をした結果、最後に濫れてくる涙なんて綺麗じゃあないと思う。
  そんなことをしなくても泣きたいときに泣けばいいし、笑いたいときに笑えばいいと思うのに、いつも溜まりに溜まったものが噴出すのように涙腺から出てくるのだ。

 女優のように泣きたいときに涙が出るようになればいいとまでは思わない。
  心が今「悲しい」と感じているのか、「嬉しい」と感じているのか、もうちょっと自分でわかるようになりたいと思う。

 そうすれば早め早めにトイレに行くように、私もすっきりと泣けるんじゃあないかと思っている。