(21)思い出

 どんな思い出があったかと聞かれて、すぐに思い出せるものがほとんどない。
  学校は楽しかったし、行きつけのチャットルームもあったし、家族の思い出もあるはずなのに、これが印象的な思い出だというものがあまりないのだ。
  アルバムを開いてみようと思ったことがあまりない。振り返って懐かしいという感情もそんなに湧かない。
  嫌なこともあったはずだろうけど、終わってみるとだいたいいい思い出だけが残っている。
  だけど具体的にすぐに思い出が浮かんでくるわけではない。
  だから私は感覚的なのだと言われたらそれまでだけど、思い出というのは「こんなことがあった」という事実を振り返ることではなく、そのときの感情や感覚を思い出すものだと思っている。
  だからとらえどころがなかったとしても、「楽しかった」と感じるだけでいいんじゃあないかと思う。