(22)出逢い

 私は生意気な子供だった。
  斜めに構えているのが格好いいと思っていたわけではないけれど、すさんだ子だった。
「先生の言うことを聞くものだ」
  と教えられた小学生時代、「一生のうちのたった数年をいっしょに過ごすだけで先生面すんなよ」と面と向かって言うような子供だった。今考えると先生はショックだったろうと思う。

 そう思うところは今でもある。一生のうちのたった一年や二年、いっしょに過ごしただけでその人がどれだけ自分に影響を残すというのだろう、と。
  そう感じるくせに、一方では地球が生れてから同じ時間を過ごすことができる奇跡にびっくりすることもあるのだ。なんていう偶然なのだろう、ひとつひとつの出会いは運命だ! とまで思うときがある。

 出逢って、別れて、また出逢って。
  人生を振り返って、出逢ってきた人の名前ひとつひとつなんて思い出せないし、顔も覚えていられない。
  だけど、どの時点かに戻って出会いをやり直せるとしたら、どうするだろうか。
  どの時点まで戻ったとしても、誰かと会えなくなるのが嫌な私は、きっと今を生きることを選ぶだろう。
  だから私にとって出逢いというのは、運命のようで、さりげないものでありながら、やっぱり今の自分をつくっている一部なのだと思う。