(24)宝物

 宝物って何があるかなって考えた。
  家族は大切だ。自分の体も大切。だけどそういうなくてはならないものとは別に、「これが私の財産」と言えるような宝は何もない気がした。
  数えられなくもないものもある。
「私、ジジのぬいぐるみが欲しいんだよね」って言っていたら、友達が空港で見つけて送ってくれた。これはとても大切。
  またあるとき、「いい北原白秋の全集を探している」と言ったら、別の友達が送ってくれた。これも私にとっては大切なもの。
  探せば他にもきっと、見つかるのだと思う。
  だけど、「これが私の財産」って言えるようなものって何もない。
  私が死んだあと、家族が形見として持つようなものは何もないのだ。

 私は何も持っていないのかな、と考えた。
  きっと思い出せないだけで、色々なものを持っているのだとは思う。
  そうでなければこんなに部屋が汚いはずがないではないか。

 宝物って何があるかなと考えているうちに
  宝物って何なんだろうと考えはじめる。

 宝物のありかも、宝物の形もわからぬまま宝探しを始めていたようだ。