(30)ありがとう

 世界に吐き捨てられた呪いの言葉がどれだけあるのかわからない。
  だけどそれと同じくらい、「ありがとう」という言葉が散らばっていればいいと思う。

 星の数と同じだけありがとうが散らばっていれば、世界が呪いの言葉で暗闇になったとしても、道を見つけられるかもしれないと思うのだ。
  私自身もついてないことがあれば畜生と思うし、腹が立てばこのやろうと言う。
  だけどそれと同じ回数くらい何かに感謝する瞬間があればいいと思う。
  私はできた人間ではないから、感謝だけをし続けることもできないし、腹を立てずにいることも難しい。

 だけど、「ありがとう」と感じる感情が残っていれば、まだ立ち直れるんじゃあないかと思う。
  当たり前のことなんて何もないんだよ。
  自分にきたひとつひとつのプレゼントに気づけるだけの心が残っていれば、きっと私は駄目なりにもがんばっていける。

 私を囲んでいるあらゆる世界たちに心からありがとう。
  ありがとうと呟くたびに、胸のつっかえがとれる気がする。