たからもの

ちいさい頃につくった
捻じ曲がった硝子細工を

床に叩きつけて粉々に壊し
たんねんに靴の裏でしゃくしゃくと踏むのです

そうして形もとどめぬ
素材そのものになってしまった硝子の破片を
丁寧にあつめて
まとめて宝箱のなかにしまっておくのです

写真は無くしました
絵は破りました
ちいさくなった服はあげました
教科書はゴミ箱へ
幼心につくった糸電話はぷつりとはさみで切りました

ときおり硝子片を太陽に透かし
零れ落ちた光の粒に失明するかとおもう

目の痛みをうったえ泣きます
歩き続けた後ろにつらなる
硝子片の道を振り返り 涙がこぼれるのです

踏みつけてきた硝子達と
ただいま足元に落ちた硝子

それからこれから壊す作品達をながめてまた泣くのです