白くてふわふわしてやたらまぶしい何かが降ってきた日

天を仰いで
太陽をにらみつけた

「あなたは偽りのあたたかさだ
だから私はあなたのいない世界にいきます」

氷の城の中で、
ずっと氷の積み木で遊んでいた

かじかむ指先で
もう冷たい光はいらないと
氷のあたたかさにすがっていた

ある日、私の心に詩の欠片が落ちてきた
傷ついたハートの鍵だと、わたしの手のひらに

私は慄いた
その欠片はあまりにも白くまばゆく輝いていて
光に裁かれていたあの頃を彷彿とさせた

「あなたは何者?」

私は詩の欠片に聞いた

「あなたの涙です」

詩片は答えた

「あなたの涙のあたたかさが、わたしの正体です」

詩の欠片はひらひらと手のひらで踊りながら
私にそう言った

「紡ぎたいでしょう? あなたは、わたしを必要として、呼んだのよ」

詩はやさしく私に微笑みかけた

涙が流れそうになって
私は慌ててその欠片に呟く

「だまされないぞ。どうせ偽ものなんでしょ」

詩の欠片は鈴のように音符を奏でて
涼しく笑った

「でも、紡ぎたいでしょう?」

ごくりと息を呑んだ。
手のひらにある詩の欠片は、ペンに姿を変えて
私の心に、言葉があふれる

――詩を書きなさい。
   あなたの心の声を、つぶさに。

私の魂に言葉が降りてくる
書きたい。

だけどそこにはインクがなかった
書きたいのに、インクがどこにもなかった
私は「インクをください!」と叫んだ

私の目から
一滴の涙が、こぼれて
インクの代わりになった

「私を紡いで」

詩の欠片が私に呼びかける
やさしくおだやかに
だけど力強い、メッセージで

強くつまびく弦の音色でも
弱くおびえた音色でもなく
やわらかく自由に、音が降りてくる

言葉の音が、降ってくる

やわらかな 旋律でした
おだやかな 気持ちでした
やさしい  波でした
うつくしい 音色でした

あたたかでした

言葉の中に愛を探して
ずっと硝子片のような詩たちを眺めていた
どれも薄くて、尖っていて
私はその言葉たちに戸惑って、積み上げては崩していた

真実のあたたかさは、涙の中に眠っていた

私はペンをとる
私の心では詩の欠片が楽しそうに踊っていた――