07/23

 仕事を終えて帰ろうとしたときに、たまたま篠宮さんが帰る時間と重なったようで、昇降口に篠宮さんがいた。
  怒っているような真っ直ぐな眉毛と、割といつも人を嘗めきったような半眼、そして一文字に結ばれた唇、長すぎる前髪と暗すぎる瞳。膝上3センチのやや長めなスカートと白いソックス、ローファーはすごくスタンダードなデザイン。
  どう見たって……素敵女子と言える人じゃあないんだ。
「三芳、おつかれさん」
  初めて、僕は彼女の声を聞いた。
  女の子としてはありえないくらい低い、だみ声。
「篠宮さんもごくろうさま」
  平常心を装ったままそう応じた。人を嘗めたような半眼に冷笑を浮かべて彼女は言う。
「私がひとりで仕事をしているのはね、中途半端な仕事をしたくないから」
  じゃあね、と篠宮さんは手を振ってそのまま僕の帰り道とは逆のほうへと歩いていった。
  ああなんか……篠宮さんっていう人格のひとかけらを垣間見たような感じがしたよ。たしかに篠宮さんは人に仕事をさせるくらいだったら自分でやっちゃうタイプだと思ったもの。