07/31
7月最後の日がやってきた。とんでもなく暑い灼熱の中、執務室はクーラーがあるので涼しい。
だけど生徒会はクーラーないし、篠宮さんは暑い思いをしながら仕事をしているんじゃあないかと思った。
「ねぇ君……生徒会室には今篠宮さんしかいないのかな?」
「は。俺が行ったときはそうでした」
やっぱり生徒会は篠宮さんひとりに仕事を押し付けて夏休みをエンジョイしているみたいだった。
「じゃあ篠宮さんも暑いだろうから、ここで仕事していいよって言ってきてくれる?」
「……いいんですか?」
「なんか悪いことでもあるの?」
「篠宮ってひとりごとすごく煩い女ですよ?」
篠宮さんはひとりごとをぶつぶつ言いつつ仕事をするというのは初めて知った。
「呼んできて」
「わかりました」
監査委員が篠宮さんを呼びに行く。しばらくして、執務室の扉が開いたかと思ったら篠宮さんが入ってきた。
長い黒髪をアップにしておだんごにしている。
「……どうしたの?」
「いや、篠宮さんの印象違うように見えるなって」
「そう? 仕事するときはだいたい髪縛ってるけど」
手に山のような書類を持ってそれを執務室の中央にあるテーブルの上に置くと、篠宮さんはぶつぶつ言いながら仕事を始めた。思いのほか呪詛のように聞こえてくるような篠宮さんの声。
「三芳……」
「何?」
「生徒会室は蒸し風呂だ」
「……だと思った。今日暑いし」
「だから、ありがとうね」
「どういたしまして」
仕事している人間の苦労が分かるのは、同じ仕事をしている人間だけだしね。