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 学校の特別授業で鬱病の講義が行われた。
  いじめとか登校拒否とかそういうのと関連して行われたんだけれどもチェック項目があってそれで○をつけて「ああ、俺軽鬱みたいだ」とか「俺まともだぜ?」とか聞こえてくる。
  憂鬱のことを鬱という奴の神経に腹が立つ。リストカットを馬鹿にする奴もむかつくけれど同じくらいメンヘラ少女が嫌いだ。ヤンデレってなんですか? そんなものが流行る時代が僕にはよく分からない。
  僕の鬱度は当然のようにまったくない。まったくの健康体で微塵の鬱の様子も見られないとの判定だった。分かってる、僕の抱えているものは鬱病なんていうそんな現代病じゃあないことくらい。これはただ気分が滅入っていて、疲れているだけだ。
「三芳、判定どうだった?」
「100点中9点」
「低ッ!」
「そういう英田は何点だったの?」
「11点。でもやっぱり低いよな、これも」
  英田も心は健康と。と、草壁ががたんと立ち上がった。
「71点だ!」
「うっそー草壁が鬱なわけあるかよ」
  草壁は漢字が読めなかったんだと思う。うん、そうに違いないよ。どう考えたって鬱とは縁遠い筋肉の化け物だし。
「おーい! 秋吉が90点台はじき出したらしいぞ」
「うわーあいつ悩みなさそうなのに」
  秋吉はもしかしたら悩んでいるかもしれないよ? なんか根暗そうな生き物だから、太宰治や芥川龍之介読むたびに疲れてそうな気がする。駄目人間は駄目な人間のストーリー読むと軽く落ち込むからね、僕には駄目人間の駄目すぎる感覚とかまったく理解できないから落ち込むこととかあまりないんだけど。
  だけどそんな図太い神経した僕ですら凹むのが篠宮さんである。
「お前ら悩んでたら友達でも先生でもいいから打ち明けるんだぞー!」
  担任がそう全員に呼びかけて出て行った。悩み……そんな大層なものは僕にはない。うじうじ悩んでいるのは性に合わない。

「山田、お前何点だった?」
  英田がチェックプリントをぺらりと山田に見せて聞いた。
「俺ー? いやお前らほど悩み多き男じゃあないからさ、21点だったよ」
「ぶっちぎり俺らの中でトップだよお前」
「マジっすか!?」
「常に絶望しているとか死にたいとかに○ついてるじゃねぇか。どこが悩みなき楽観主義者だよ?」
  山田の奴も何か悩んでいるのかな。まあ受験生だから悩みのひとつくらいあったっておかしくない年頃じゃああるんだよ。
「篠宮さんは何点だった?」
「えーと……10点?」
「篠宮ー、お前は平気で嘘つくんだな。お前こいつらのこと友達だと思うんだったら本当のこと言えば?」
  山田が笑いながらそう言った。プリントをつまんで、僕のほうに見せてくれた。
  人生が楽しくない。常に悩んでいる。たまに死にたい。私は生きている価値のない人間である。性欲が枯渇している。外側に興味のもてるものがない……などなど。
  地味に点数稼いで31点……彼女は軽鬱だった。