イアン=サーク
ネイサン=アダムソン
俺達二人は南国の島に今いる。別に旅行でバカンスに来たわけではない。
二人で旅行に出かけたのは合っている。だが、船が嵐に飲まれるまでだった、俺達の楽しい旅行気分は。
すごい嵐が来て俺は波に飲み込まれた。遠くでネイサンの俺を呼ぶ声ははっきり覚えてるが、気がついたときには、この島の浜辺に二人してうちあげられていた。
俺の名はイアン=サーク、なんどもないただの大学生だ。となりのネイサン=アダムソン、同じ学校の今回卒業記念の思い出づくりにとこのヨットの旅を企画したクレージー野郎だ。彼は家はそこそこ金持ちで父親に借りたヨットでそこらへん何日かの旅が、いきなり行き先わからない崖っぷちツアーになった。
ということで俺は今、絶望の真っ只中にいる。
「なーなー、ここの海綺麗だな。ここほんとに無人島ならプライベートビーチ?いや、プライベート島じゃないか?」
ああ、キレそうだ。危機感がないそのセリフにうなだれる。
「プライベートというより、ここが無人島なら俺達はリゾート気分捨てて、サバイバルをしないといけないじゃないか?」
「まぁ、たしかに。そういう危機的状況かもしれないかもだけど。ここの海ホント綺麗だな。ちょっと浜辺散歩して何か落ちてないか探さないか?」
二人して腰を上げて、そこらへんに散らばってるものを探してみる。ヨットの破片と荷物が見つかって、俺は海を見た。
昨日の船の衝撃は島に難破した音だったのだろうか?
ネイサンが食料になりそうなものと荷物を見つけ、それを一箇所に集めると、服を脱いで全裸になった。
思わず目を背ける。
「何やってるんだ?」
「泳ぐんだよ。下にまだ使えそうなものが落ちてるかもしれないだろ?」
「それにしても、全部脱ぐ必要は無いんじゃないか?」
ネイサンは明るく笑って。
「何恥ずかしがってるんだ?こんな時ぐらいしか裸で泳げないだろ?」
ちらりと横目でネイサンの体を見た。ネイサンはモテるだけあって体は仕上がっていていい体つきをしている。
「お前も手伝え。裸で泳ぐと気持ちいぞ、きっと」
「やめろ、気持ち悪い」
そういってても、食料とかその他のナイフ類や濡れているだろうが毛布とかあるなら取ってきたい。俺は服を脱いでパンツ一枚になって海に潜り込んだ。
俺は自慢じゃないが運動系は苦手だ。すぐ海面の下にある物も息が続かず拾いあげるのに苦労した。俺がようやくひとつ回収した頃、ネイサンは両手に回収した荷物を持って陸に上がっていた。
俺も頑張らないといけない、また水面に潜り込んだ。
俺が荷物を集めて回って上がってきてへとへとなところを、ネイサンはすかさす、ワインのボトルを差し出してきた。
「飲めよ」
「馬鹿、水分は貴重なんだぞ?」
「そうか?だったら、こっちとかもっとこの島にお似合いかも」
そういってヤシの実を差し出してきた。
俺は近くになっているヤシの実をみた。随分高いところになっている。
「おいおい、俺が水中でもがいてる間に取ってきたのか?どうやって?高くないか?」
「ああ、ヨットで出る前に現地の人に取り方と割り方教わったんだ。こんな早く活用するとは思わなかったけど」
なにより塩水以外の水分がとりたかった。穴の開いた口から貪るように汁を飲む。喉を潤す南国の自然の味。
本当は水が飲みたかった。わがままは言えないが飲水の確保はこれ以外にしておかないと行けないと思った。
「じゃ、島の探索は明日にして、今日は寝床確保しておこう。もうクタクタだろ?」
「……そうだな。明かりがないなら火が暗くなったらおしまいだな。どうやって寝床をつくる?」
「葉っぱをぐるぐるするのもな。とりあえずシーツを乾かして、適度に日差しが避けれるようなテントみたいなの作らないとね」
そう言って彼はそこらへんに落ちてる枝や葉っぱで、簡単な日差しよけの小屋を作ってしまった。
「生活力あるけど、遭難経験があるのか?」
「小さい頃に習ってたボーイスカウトだよ。あした水とか島の地理を見ておこう」
そういってネイサンは横になって寝てしまった。
俺も横になって寝ていたが、ネイサンの寝返りしてきてそのまま引っ付いて寝ている。普段なら暑苦しくて手を払っていたが、今は寒くてそんなこと家はしなかった。人肌が温い。
次の日俺が目を覚ましたのは空腹に、魚の焼けるいい匂いだった。
ネイサンはバナナをむいて食べていた、バナナの葉で皿のようにして焼き魚が置いてある。
「よ、起きたか。丁度焼けたところだ」
「お前、魚も自分で?」
「親には感謝しないと。いろいろ経験させてくれたんだから。でも狩りはしたこと無いな。本で読んだぐらいだ」
次は狩りをやるんだと意気込むネイサン。本当に生活力だけはあるのだなと感心して、俺は採れたてのバナナと焼き魚にかぶりついた昨日から何も食べてない。
そして、今日は島の探索に出かけた。
浜辺をぐるっとまわって見て、ジャングルなかを歩きまわり、水飲み場を発見した。
「なーこういう時、一番映画で多いパターンは?」
「そうだな、映画と現実じゃ偉いさだが、猛獣がいるとか」
「いやいや、先住民がいて俺たちを見張っているんだ。そして俺たちが寝てる好きに…」
がるると俺に抱きついてきてくすぐって来た。
いつもは軽くこずいて終わるが、それは簡便な展開だった。
「本当に先住民がいたらどうするんだ?」
「話しかけるよ。そして平和の笑顔で話しかける」
「殺されないといいんだがな」
ネイサンはじゃれつくのをやめて離れた。
「そん時は戦って逃げような。守るから、俺を見捨てるなよ?
「そうだな、俺は逃げるな。お前をおとりにして」
「おーう。そいつはひどい」
「冗談はさておき。気になるんだが」
「なにが?ひょっとして、この水飲み場があまりにもよく作られすぎてて生活してたんじゃないかってこと?誰かが?」
やっぱり気になってたから先住民の話題を降ったのだろう。使いやすくされている。それは俺も思ったがいかんせん古い。
「もっと奥行ってみよう。痕跡たどればわかるかも」
そう言って彼は歩き出した。
俺も気になるので止めはしなかったが逃げる準備だけはしていた。
樹の枝で道を切り開いていくと。奥に何か人工的な建物があった。そこには人が住めるぐらいの小さな小屋があった。
「おい、やばい。人が住んでるぞ」
ネイサンは俺の注意を無視して中に入った。
しばらく出てこなかっあので中を除くと、そこには人骨がベットらしき場所で寝そべっていた。
「以前にも難破した人がいるんだね」
「どうする気だ?」
「外に持ち出そう。ここじゃなくちゃんと墓を作ってあげないと」
そして適当な場所を見つけ穴を掘って二人で遺骨を埋葬した。
「祈りを捧げようか」
そう言って二人で黙祷して。彼の冥福を祈った。
「あの小屋さ。よく出来てるから、住んじゃわない?水飲み場も近いし」
「馬鹿言え。船が見えたら合図するんだ。海の方にいたほうがいい。」
「でも俺こっちで寝ようと思う」
人が死んでるとこで寝たくないのが本音だ。あいつの霊が出てきたらどうする?俺はネイサンを置いて海にも戻った。
夜中、ジャングルからかさかさと物音で目が覚めた。最初はネイサンが怖気付いて帰ってきたのかと持ったが、声をかけても返事がない。俺は不気味に思い。暗いがジャングルのなかを歩いてネイサンのところに行った。
ネイサンは寝ていたが俺の気配に気づき目を覚ました。
「どうした?なんかあったのか?」
「ここには先住民いるのかもしれない。一緒にいるほうがいい。こっちで寝る」
俺はまさか昼間の遺体が幽霊になって出てきたとはいえず、ネイサンの下で寝た。
朝起きて、二人でよる音がした方にいったら、猿の足あとがそこらへんにあった。
ネイサンが爆笑して、俺は恥ずかしかったが、暗かったので何も出来ないあの恐怖といったらすごく怖かったので。笑わせておいた。
今日も船が通らないか二人で浜辺に座っている。
もう生活力はネイサンに任せている。俺がなにかやるにしても足をひっぱるようなので邪魔をしないようにしてた。いや、言われることはやっている。だが、俺は恐れている。
いつネイサンが手のひら返して食料や生活の支援を打ち切るかわからなかったからだ。
ネイサンは人がいいから意地悪なことはしてこない。だが彼の俺への暗黙のルールはもうできていた。
それは、一緒に寝ること。手を握ること。
俺は我慢している。夜彼が俺に抱きついてきても。
これが普段の遭難してない生活だったら俺は彼を殴って、縁を切ってるところだろう。
だって怖いじゃないか。
今も怖い。
こいつがいつ俺を襲ってくるかわからない。
遭難してなかった時ネイサンには彼女がいる。学校でも有名な仲のいいカップルだ。
彼女が言っていた「ネイサン、寂しがり屋っていうか甘えん坊なのね」
きっと、人恋しいにちがいないと頭を振るが、それでも俺はNOだった。
実は俺はネイサンの彼女のキャサリンが好きだった。
だが、友人の彼女なだけにその思いはそっと閉まって封じ込めていた。
ネイサンがいなければ…
俺はたまにそう考えていた。
ふと、寝ているネイサンの顔を覗き込む。
ネイサンはうわ言でなんか言っていたが、聞きとれはしなかった。
俺は朝起きたらネイサンに尋ねた「昨日うわ言でなんか言ってたぞ。何の夢を見ていたんだ?」
きっと、家が恋しくて家の夢でも見ていたんだろうキャサリンとかと一緒に。
「実は君の夢を見ていた」
「へー、どんな?」
俺は態勢を崩して座っていると、横にネイサンが座ってきて。
「君とキスしてる夢。夕暮れの浜辺で」
「気持ち悪い」
なんだそれは、と顔をしかめた。
「気持ち悪いか?」
「だって、野郎同士でキスだぞ?気持ち悪い夢見たんだな」
「俺は別に悪くなかったけど?君の事好きだし」
ストレートに驚くこと言ってくる。俺は沈黙した。どう切り抜けようか思考を巡らせる。
「あーはいはい。悪い冗談だな」
「本気じゃないと思ってるんだろ?」
「お前にはキャサリンがい……」
そこでネイサンの顔がよってきたので俺は思わず突き飛ばした。
「何考えてるんだ!?」
「な。一度でいいからいいだろ?」
いくら無人島生活が長くてもそこまで見境なくなってくるものなのかと驚いた。
ネイサンが寄ってきたので俺は思いっきり突き飛ばし。そのまま浜辺に向かって走って行った。
俺は心に火がついた。
脱出してやる、俺だけで。
俺はイカダを作ることにした。
だが、今冷静になってみると何もかんも世話になっていて、求められたら断るとはそんなことのいいことはない。彼にそれなりのことされても本来なら文句は言えない立場なのだ。それに、ネイサンが本気で俺を排除しにかかったらそれがほんとうに怖い。今ここの島で一番怖いのは人間のアイツしかいないのだから。
俺はいったんネイサンのもとに帰るか考えた、だがどう謝ればいいのか?それとも謝られればいいのか?関係はこじれた。あの時拒まなければ食料だけは確保できたんだ。
だが、甘えてられない。
とりあえず、近くのヤシの木に登ろうとするもしがみつくのが精一杯ですぐに滑り落ちてしまう。
魚を捕るにしても魚に遊ばれるだけで話にならない。
そして、バナナがとれない。
今は水しかのんでいない。
俺はジャングルのなかを3日食わずに過ごした。
俺がとうとう空腹で気絶してしまった。
目が覚めたら、果実を柔らかくすったものを口に流し込まれていた。
心配そうに顔を除くネイサンがそこにいた。
「すまない。あんなこと言わなかったら…お前がこんな目に合わないですんだのに」
「もういい、怒っていない」
「肉食えるか?そこらへんの獣を仕留めたんだ、早く元気になるよな?これで」
「すまなかったのは、俺の方だ。いままで、よかかってばかりいて。お前の好きにしていいから」
「やめろ、弱みにつけ込んだみたいじゃないか」
俺は力なく笑った。
「俺、お前の気持ちっが、俺の事好きで受け入れられるとうまで待つから」
「ネイサン…すまない」
俺はお前を裏切ることに関して謝る。
その日からネイサンは俺に抱きつかなくなって離れて寝るようになった。
俺は見つからない反対側の浜辺てイカダを作った。食料も乗せて俺は一人で海に出た。
俺は海をよく知らないので漂流することになったが。
貨物船に拾われて俺は無事に遭難から脱出した。
俺はキャサリンに自分の気持を言おうと思っていた。
もう、邪魔なネイサンはいない。
だが、彼女の第一声はやはりネイサンのことと、お腹に彼の子供がいるということだった。
俺はネイサンは逸れたがまだ生きているかもしれないと嘘をつき。
さすがに子供ができたキャサリンが気の毒なので。
俺は船をチャーターして、また島に戻ることにした。
島について。彼がいるであろう小屋に行ったら、そこには白骨死体が転がっていた。
「そんな、嘘だろ。お前。キャサリンや子供がいるのに。こんな・・・」
当初、俺はネイサンを置き去りにして野垂れ死ぬのを計算していたが、いざ自分が犯した罪に胸がいたんだ。
俺は骨を抱いて涙を流した。
「おいおい、そんなに悲しいのか?」
「当たり前だ、ネイサンお前が死ん……なんで生きている?」
「生きてるさ。お前はなんでここにいるんだ?帰ったんじゃないのか?」
知っていたのか?まさかイカダ見つかっていたのか?
俺は驚いているがしがみついていた髑髏を元の位置に置いて。
「誰の骨だ?」
「ほら、ここに来たとき死んでいたあの名前がわからない骨だよ」
「なんでここにある?」
「俺の新しい友だち。よく会話しているんだ」
危ない。いっや、良くない。俺がこいつを追い込んだようなものだ。
「ああ、ネイサン、そんなことより船を持ってきた。一緒に帰ろう?」
「俺は帰れないよ。ゴメン」
「馬鹿言え。お前にはキャサリンやそのお前の子供がいるんだぞ。家に帰るんだ」
「キャサリンに子供が?」
俺はネイサンの腕を引っ張って浜辺まで連れていった。
外はちょうど夕暮れが近い。
「俺はやっぱり帰れないよ」
「なんでそんな勝手なことが言えるんだ?」
「お前キャサリンの事好きだっただろう。キャサリンには俺は死んだと伝えてくれ。俺は都会の生活がもう嫌になっちまったんだ」
「都会から離れて住めばいいだろう。こんなところで住む必要はない。俺と帰るんだ」
ネイサンは頭を振った。俺は語調を強くしていった。
「いいんだな。俺は帰ってお前が死んだって言ってキャサリンと一緒に暮らしても。お前の子供を育てて幸せに暮らしてもいいんだな?」
ネイサンは軽くハグしてこういった。
「イアン、ありがとう、迎えに来てくれて。」
そう言って俺の唇に軽くキスして彼はジャングルの中に消えていった。
俺は夕焼けがゆらゆらと揺れる波の音を聞きながら、一人
「バカヤロウ」
そう呟いた。俺はゴムボートで船に戻り。キャサリンとご両親にネイサンは死んだことを伝えに行った。
それから何年かたった。
子供も大きくなり、俺はキャサリンと結婚し、海に近い家を買い。
そこに暮らしていた、ある日テレビを付けると、そこにはニュースでネイサンが島から見つかった報道が流れていた。テレビに写った彼はすこしやつれていたが笑顔はそのままだった。
キャサリンは驚いていたが、息子は合わせないと言っていた。
俺は落ち着いた頃に、ネイサンに訪ねに行った。
彼は報道陣におわれて疲れた感じになっており「やっぱり、俺は何処か田舎の島に行くことにするよ。都会はうるさすぎる」そう言っていた。
俺は今度飲みに行こうと誘って、外に出た。
海風と波の音が聞こえる。あの日のお前を俺は思い出す。