ニコル君の旅の始まり


ニコル=パウロポは一人森の中に入った、ここは村から離れた森の中、周りに鬱蒼と茂る森林。
ニコルはグラスランナーの成人したての男の子だった。15歳になる彼だが人には言えない恥ずかしい事を今でも信じてる。
むかし、ゆで卵で出てきた朝の朝食卵を、隠し持って毎晩寝床で温めていたら、ある日雛が孵っていたのだ。
それからニコルは卵は温めれば孵ると信じている。もちろんそれは見かねた両親の思いやりの寝てる間にすり替えただけの犯行だったが、そんな事も知らずにこの歳まで生きてきた。
今日は野鳥の卵を探しに来た、最近吟遊詩人になるためバードを覚えた。
鳥でも飼ってその鳥に歌でも歌わせようと思い、野鳥の卵を温めてペットとして育てようと思ったのだ。
「ここらへんだと思ったんですけど・・・どこにあるんでしょうか?」
野鳥の珍しい鳥がこの辺に巣を作っえいたはずと木の周りをぐるぐるとまわって探してみた。
すると丁度大きめな木の上に野鳥の巣が見えた。
子供くらいの身長しかないが、その木に確りと捕まり、上まで登って行った。
「うわぁ、取れるかな…」
ずるずるとしがみついて巣のところまで行くと、巣の中に綺麗なツルンとした鶉のような卵が2個巣に乗っている。片手でその卵をひとつ捕まえた。「やった!」と思ったら支えてる手が滑ってニコルは下に落ちた。
落ちた衝撃で卵は割れてしまった。
「ああ!可哀想なことしちゃったな…もう一個の卵どうしよう?母鳥怒るよね、さすがに」
衝撃でうった頭を撫でつつ、どうしようか迷っていると、背後で獣が唸る声が聞こえた。
ハッとして後ろを振り返ると狼がこちらを美味しそうな目で見るかのように見てくる。
しまったとニコルは慌てて木の上に登ろうとした。
「うわわわ、食べても僕美味しくないですよ!!」
しがみついて一生懸命登っても助走つけた狼のジャンプで服の下の方を噛まれた。ずるずると下に引きずられ落とされそうになるのを力いっぱい抵抗して木にしがみつく。
(うう、僕ここで死んじゃうのかな?)
そんな事考えていると、ヒュッと風を切るおとがした。
その飛んできた何かは狼のこめかみに当たって狼はきゃんと鳴いて服から口を離した。
「ほら、グラスランナーなんか食べても、美味しくないぞ。こっちこーい!!」
後ろで、青年の声がした。青年は狼に何度も石をぶつけてニコルから離れさせる。
「ほら、チビ、逃げるぞ!!」
そう言って木にしがみついていたニコルを引っつかむとそのまま引き剥がして、小脇に抱えてあっという間に逃げ出した。
狼が後ろを追ってくる声が聞こえた。ニコルは助けてくれた青年の顔を見た、赤銅色髪を三つ編みで長くゆった。猫目な身の軽そうな男だった。
狼の攻撃をひょいひょいと避けながら撒こうと走る。
しばらく小脇に抱えられていたが、この先にニコルは見覚えがあった。
「あ、そっち駄目ですよ!」
だが、間に合わず青年は崖の切り立った行き止まりの道にたどり着いた。
「あ、やっば。行き止まりだった?」
横に逃げようとしたら、狼が行く手を阻んできた、狼と距離を取りながら、青年は舌打ちして。
「逃げられるのここまでか…仕方ない。チビ、戦え」
そう言って、ニコルを下ろすと、青年は拳を構えた。どうやらグラップラーのようだった。
ニコルはぶんぶんと顔をふって。
「僕、戦ったことないんです!」
「食われて死にたいなら俺何も言わないよ?」
ニコルはぐっと思った。さすがに食べられたくはない、近くの石を手に握ってパチンコを構えた。
狼がまず最初にニコルに襲いかかろうと飛びかかってきた、ヤラれると思ったが、青年が割って入ってきて飛びかかってくる狼をキックで大きく蹴り上げて横に向かって投げた。
ずしゃーと体制を崩すもまた態勢を持ち直し、狼は今度は青年めがけて襲いかかってきた。
「危ない」
がぶりと腕に噛み付かれる青年。
「ぐっ。でも、これで捕まえたっと!」
そう言って狼の首を開いてる腕て挟んだ。
少し宙に浮く状態の狼と首を確りと捕まえた青年。
青年は思いっきり手に力を入れて狼を気絶させようとする。
狼は苦しくて顔を歪めた。顔を歪めているのは手を噛み付かれてる青年も同じだったが、狼は青年の腕を噛み引きちぎろうとした。
「危ない!!」
ニコルは石を思いっきり引いてパチンコで飛ばした、石は狼の目にぶつかった。狼は小さく悲鳴を上げて青年の腕から口を離した、その衝撃で青年も狼から手を離す。
痛そうに後ろに交代する狼。
「はぁはぁ、痛いね…」
「大丈夫ですか?」
「片手の感覚すこし可笑しいな?片手が余っているけど…足もある」
「無理しちゃ駄目ですよ」
「がるるるるるる」
狼が怒ったように牙をむき出しにしてこちらに近寄ってくる。
ニコルは次は自分が殺られるのかと怖かったが、青年の前に立ちはだかり、勇気をだして、石を拾って構えなおした。
「来い、今度は僕が相手だぞ」
狼が助走つけてこっちに襲いかかってきた。
その時、横から影が飛び込んできたと思うと、その影はニコルと青年の盾になる様に狼との間に立ちはだかった。カキーンという音が聞こえたような気がする。
人だ。しかもよく見てみるとその人物はナイトメアだった。ナイトメアは狼を剣で受け止め、狼の腹を思いっきり蹴飛ばした。
狼は後方に投げ飛ばされた。
かなり弱ってきてるみたいだった。まだ唸り声を上げている。
「悪いが、早めに死んでもらう」
そう言ってナイトメアは少し剣を下に下ろすと、小さかった角がみるみると後ろに向かって立派な大きな角を作り、肌は青白くなっていった。
「異貌か、ナイトメアだな」
そう青年は呟いていた、ニコルはそのままじっと見守っている。
ナイトメアは剣を構え直して、狼に突っ込んでいった。
狼もまたナイトメアに突っ込む、剣が思いっきり狼の胸を切り裂いた、狼はどさりとその場に崩れると、苦しそうに喘いでいる。
ナイトメアは剣を高くかざして最後に首元に突き刺した。
(凄い)
ニコルはゴクリとその強さをみて唾を飲み込んだ。
ナイトメアは息を引き取るのを見守って開いたままの瞳を閉じさせて。
変身した姿をといて、こちらを見てきた。
「大丈夫か?そこの兄さん、血が酷く出てるぞ?」
「あ。・・・・・・痛い。」
そう言って青年はそのまま膝をついたかと思うと、倒れこんで気を失ってしまった。
「うわわわわ大変だ!お兄さん。お兄さん、しかりして!!」
「ヘタに動かすな、この布使え。腕に巻いて、村につれていくんだ」
そう言ってナイトメアは青年にハンカチを巻きつけて、青年を肩に担いだ。
「お前の村はどっちだ?」
「こっちです!」
ニコルは急いで自分の村に二人を連れていった。

「いやーもう痛くて、お腹好きすぎて倒れちゃったんだ!ここ君の家?料理美味しいね?」
美味しそうにご飯を食べる青年。その横にナイトメアが座ってご飯を食べている。
「まったく、驚かせやがる、傷があまりたいしたことない上に自分はフェアリーテイマーなのに魔法つかわないとは…」
「いや、MP使いきっちゃって…いやー長旅で迷子な上にご飯食べてないだろ、やっと人見つけたと思ったら、狼が襲ってるだろー走るに走って腹へって戦えないし…おかげで助かったよ。ふたりとも…えーと、俺、李猫(リーマオ)冒険者登録済みで旅の最中」
「あ、そうなんですか。大変な時に助けてくれてありがとうございます。僕次から武器とか持っていきます。あの森普段はモンスターや大型の獣はでないんですが…運が悪かったんですね」
「まぁ、いい。俺は村で最近狼やらモンスターやらがでるので、退治して欲しいと依頼されてたんだ。金はもう受け取った。お前が寝ている間に」
財布袋をチャランと手の上で転がしてるナイトメアとご飯をバクバクと食べる青年。
「ふたりとも冒険者なんですね。いいな、僕はこの村の周囲から出たことないんですよ。憧れてるんだよね、実は、冒険者ってどんなことするんですか?」
「蛮族撃退とか、遺跡調査とか…まだ経験が浅いから、多くは語れないが…そんなことより、おまえら俺みたいなナイトメアを見なかったか?目が赤くて、髪が白く。肌も白い。エルフ育ちなんだが…女なんだが」
「もぐもぐ。ごくん。いや、そういう珍しいの見てないな〜ほかのナイトメアなら見たことあるけど。なに?俺みたいなってことは、兄弟かなんか?」
「俺の姉さんなんだ。小さい時にはぐれてな、わけあって。探してる」
「うーん、見てないです。僕初めてナイトメアみましたから。」
「そうか、宛が外れたな…」
「ん、旅してまわってるのかい?俺も自分の見たことも覚えもない故郷を当てもなく探してるんだけど。よかったら旅一緒にしない?一人は辛くて」
「……構わねーけど。いいのか?俺はナイトメアだぞ?」
「構わないよ。俺、偏見ないんで。」
「いいな〜一緒に旅とか憧れます」
そうニコルが呟くと、青年が顔を近づけてきて。
まじまじとニコルをみる。ニコッと笑って
「君も一緒に来るか?君料理美味しいし」
「え?いいんですか?」
「俺は歓迎だけどな?」
そう言って、隣のナイトメアを見る青年。
ナイトメアがちらりとこっち見て、しばらく沈黙して。
「俺も、構わないが。邪魔するなよ?あと、武器はちゃんと揃えろ、俺は宿にいる。あとで来い」
そう言ってナイトメアは立ち上がって出て行ってしまった。
「ん、俺もあとで宿にいかないとな」
「あの、僕邪魔ですか?」
ニコルは不安になって青年に疑問をぶつける。
「いや、そんな事ないさ。俺のこと守ってくれたじゃん?名前なんて言っけ?」
「ニコルです」
「そ、ニコル。最初は誰だって頼りないの。でもそのうち、強くなるの」
「そんなもんですか?」
「そんもんだ。それと、大事なことがある……」
「なんですか?」
「ここ、酒あるか?」
「え?」
ニコルの家の酒は全部李猫の腹の中に収まってしまった。酔もせず、気持よさそうに外にでた李猫は
「旅に出るなら家の人になんかいっていったほうがいいよ?じゃ、待ってるから」
そう言って、夜闇に消えていった。

その夜、父と母に今日あった出来事と旅にでたいということを素直に話した。
母は心配そうだったが、父は「いいだろう。父さんも冒険者は夢だった。行ってきなさい」といい、狩り用のノーマルボウを渡してくれた。
「ありがとう、お父さん、お母さん。許してくれて」
「でも、気おつけるのよ」
ニコルは心を踊らせて、旅の準備をした。フライパンや食器、壁に飾ってたハープ。詰めれるものは詰めた。
「楽しみだなぁ。今日はもう遅いから明日にしよう!わぁ、夢みたいだ。僕が冒険者…ふふふ」
ニコルはベットに倒れこむと笑いを思わずこぼして笑った。
興奮していたが、眠りはあっという間に来た。すやすやとふとんにくるまって寝ていた。

朝起きて。
「行ってきます」と、最後に家にお辞儀して、村の小さな宿屋に向かった。
宿屋に入るとグラスランナーの伯父さんがニッコリと笑ってきた。
「やぁ、ニコル、早いね。何の用だい?」
「あのう、昨日ここに李猫って人と、ナイトメアの男の人が泊まりませんでした?」
「ああ、泊まったよ、今奥で朝食を食べてる。何のようなんだ?弓矢なんて格好よくかけちゃって!」
「僕、冒険者になるんです」
「へぇ、そいつは。凄い。じゃ、冒険者登録は済ませたかい?」
「いえ、まだ。」
「冒険者の宿に行くならよって登録するだな。ニコル君が冒険者にこいつはいい!ははは」
恰幅のいい腹をふくらませて笑っている。ニコルは照れくさそうにはにかむと。さっさと、奥のほうに進んだ。
「おじさん、奥に言ってるね。じゃ」

奥を見てみると朝食が取れるとこに李猫が座って今日の朝食を食べている。近寄ったらこちらに気がついて手を挙げる。
「よ、ニコル。どうだった?」
「両親、許してくれました。ほら、用意もしてきましたよ?」
と、荷物を見せた。
「こりゃまた大荷物だね」
「いろいろと詰めちゃいました」
ニコニコと笑っていると。頭がしがしされて。
「あとは冒険者登録するだけだな!」
そこへ昨日のナイトメアがやってきた。女将に朝食を頼んで、すぐ近くに腰掛けた。
こっちをちらりと見ると。
「凄い荷物だな。旅の了解はとれたか?」
「とりました。いつ旅に出るんですか」
「食べたらな。」
サンドイッチとスクランブルエッグを口に運び黙々と食べている。
李猫がぽんと手を叩いて。
「そういえば、まだ名前聞いてなかったな?」
「僕ニコル・パウロポっていいます。お兄さん名前は?」
「……ニケ・ノア。ちなみに俺は男じゃないんだ」
李猫が小首かしげて。
「その図体で女の子っていう気?詐欺だな!」
「詐欺で悪かったな。昔はこんなんじゃなかったんだが、いつの間にか声が野太く、たくましい体つきになっちまってな……」
「へー、お姉さんもたくましいんですか?」
「知らない。小さい頃過ぎて」
「まぁ、いいや、あらためて宜しく。じゃ、次向かう場所決めようか?」
そう行って宿屋のマップを広げた。
「僕の村ってこんなトコにあるんですね。」
「もうここらへんは調べたんだ、今度は都会に行こうと思うんだが」
ニケがそう言って地図のでかい街を指さして。
「こんどはここらへん探そうと思う」
「うん、いいじゃないかな?俺の故郷街かもしれないし」
「わー、街ですか。どきどきします」
ニケはご飯を食べ終える。李猫もご飯を食べ終えたところで、ニコル達一行は村を離れて、都市に向かった。

ニコルは離れるゆく故郷をチラッと見て、軽く頭を下げた。
これで最後かもしれないと。ふと、振り向くと二人が先に歩いてる。そのあとをおって走る
「待ってくださーい、ふたりともー」

ニコル編おわり