ニケの旅 04

「おなか空いたわ。もう一歩も動けない」
アンナが最初に音を上げ、しゃがみ込んだ。といっても他の皆も腹が空いているのは同じだ。
「俺っちだって我慢してるさ、アンナ立つさ。」
「確かに飲まない食わないで2日目になるな…だが食べるものといっても、ねーんだ。我慢しろ」
「そんな事言ったって…」
「僕、もう一度狩りしに行きますね?」
「ニコル、お前だって空腹過ぎて動けないんじゃないのか?」
「うう、大丈夫です。獲物ないとどっちにしろ餓死ですし…行ってきます」
「また人間刺してくるなよ?」
これ以上のお荷物が増えるのは勘弁だった。
ニコルは大荷物を下に置いて草むらに入っていった。

道の端に3人で野営する。ニコルの帰りを待ちながら。
「お腹すいて気持ち悪いさ」
「黙れ」
「私も気持ち悪い」
「俺はもっと空腹を体験したことがある。こんなのただの小腹が減った程度だ」
「うう…ニケは頑丈さ」
「本当の飢えをしってるって大変ね。と言っても私達これが限界なの」
「お前は村から家出する時ご飯ぐらい持って来なかったのか?」
「持ってきたわよ。でも迷ってるうちに小腹が空いちゃって…」
そこらへんは本当に冒険慣れしてない村のお嬢さんと言った感じだ。
ニケは横になり…
「ニコル来たら教えろ」
「俺っちも何か無いか探すさ…」
そう言って李猫も草むらに入って探しに行った。といってもすぐ姿が見える範囲だったが。
「ちょっと、ニケ。貴方探さないの?」
「…お前も探せないだろうが…俺は寝て凌ぐ」
「もう!」
そうこうしてるうちに李猫が「あった!!」と叫んでるのが聞こえた
「なにか見つかったのか?」
李猫がこっちに両手いっぱいにキノコを持ってきた。
「たくさん生えてたさ」
ニケはちらりと一瞥しただけだったが、それが毒キノコの種類だと一発で分かった。これが普通のキノコだったら皆で食べ与えてたが。
「李猫、お前……頑張ったがそれは毒キノコだぞ?食べると幻覚が見えて、わけのわからないこと喋り出して吐くのがオチだぞ?」
李猫はがっくりとかたお落として、キノコを見つめる。
「……せっかく見つけたのに。こんなに美味そうなのに…でも吐くだけで死なないなら…」
「やめておきなさい。私薬草なんて持ってないんだから」
3人が肩を落としてると。向こうの方からすごいスピードで走ってくる何かが来た。
3人は何事かとみたら、ニコルがもうダッショで走ってきた。手にはウサギが捕まえられていた。
「皆さん!狩って来ましたよ!!」
「まぁ、可愛いウサギ!」
「わぁー美味そうなウサギさ」
「よくとれたな。でかしたニコル」
「えへへ、上手いもんでしょう!!」
だがまだ生きている。
どうやら無傷で持ってきたらしい。
「どうやって捕まえたんだ?」
「走って捕まえました!!」
「弓使え!!」
恐るべしグラスランナー、草原を駆ける人。
ニケはさっそく、うさぎの首をへし折った。
ニコルがショックそうな顔をする。アンナも少し嫌な顔して。
「「可哀想」」
「おまえら、食べなくてもいいんだぞ?」
「弱いものは食べられる運命さ!」
「それにしても大人しいウサギだったな…毛並みもいいし、太ってるし…ん?」
首にコーラル色のリボンが巻かれている。
「なんだ?これ?」
リボンをしゅるりととって。
「綺麗なリボンね」
「ああ、そうだな。お前にやる」
ニケはリボンに用はないとアンナに渡した。アンナは嬉しそうにリボンで三網を作りゆった。
「似合う?」
「ああ、似合うさよ」
「可愛いですよ」
「いいんじゃないか?」
ニケは手際よくウサギの皮を剥いで肉を4等分に切りわけた。大きな肉の塊ができた。余れば次のご飯にも使えそうだ。
「大きいウサギだからいっぱい食えるな…」
「あ、そこからは僕が調理します〜」
「私も手伝うわ」
先ほどの同情はどこえやら消えた。
ニコルとアンナはニコルの持ってきた調味料で簡単に料理をこしらえた。
「焼いただけだけど、美味しそうね…」
空腹はMXSだった。肉の焦げる匂いに4人の視線は釘付けだった。
丁度良く焼けたお肉を食器に盛って。
「では、ウサギさん。あなたの命無駄にしません。頂きます。」
「頂きます」
「いただくさ」
「頂きます。はー、やっと食べれる」
そう言って皆黙々とうさぎの丸焼きを食べつくした。

「ふう、お腹いっぱいさ…」
「食べましたね…」
「美味しかったわ」
「そうだな」
4人はまた街道を歩きながらユーベールの街を目指して歩いてた。大きな5つの岐路の街道が現れた。ここだけ大きな作りになっており。
立て札にそれぞれ行き先方面が書いてある。
「ここを北に上がればユーベールさ」
「大きな道ですね〜5つに分かれてるからヒュドラ街道なんですね?」
「ヒュドラってなんだ?5つと何が関係ある?」
ニケが不思議そうな顔で李猫に聞く。李猫は得意気に。
「ヒュドラっていう5つ首の大蛇がいるさ神話で首を切り落とすとまた首がにょきにょき新しく2つ生えてくる化物さ」
「はーん。面倒だな」
「ま、神話だから。実際にいたら怖いさ」
李猫が肩すくめていると、ニコルが指さして。
「向こうから誰か歩いてきますよ」
「旅人か?」
皆してニコルが指さした北側をみた、するとタビットの女の子?がそこらへんをなにか探しているようだった。
「声かけてみるか?」
どうやら怪しい感じはしない。
ニコルが走ってタビットに近寄る。その後みんなたらたら歩いて近寄り。
「どうしたんですか?」
親切そうにニコルが尋ねると、タビットの女の子が悲しそうな顔して。
「ムクちゃんを探してるの。」
「ムクちゃん?」
「なんだ?逸れたのか?」
「どうしたさ?迷子」
タビットは手でこれっらいのと大きさを表して。
「茶色いウサギなの結構ぽっちゃりした感じの、首にコーラル色のリボンをしているわ…」
「あ、ウサギですか…コーラル色の…」
「リボン?」
「首に巻いてるの、リボン結びに…」
タビットが悲しそうな声で言う。
フリーズしたのは皆同じだった。ちらっとアンナを見るアンナはゆったりとゆった髪を後ろに隠す。
(まさか…あのウサギ…)
(うう、可哀想なことしちゃいました…あの子ペットだったんですね)
(だとしても俺っち達あのままだと死んでたさ)
(ごめんなさいムクちゃん)
ひそひそと話し込んでると、タビットがこちらを見て。
「あなた達冒険者さん?良かったら私のムクちゃん探してくれない?お金は払うわ…といっもそんなに持ってないけど」
「え?あ、俺っち達急いでいるさ」
「う、そのウサギなんで逃げたかしらねーけど、きっと大自然に帰りたかったんだと思うぞ?」
「そんな!!」
うるうると泣き始めるタビット。
気まずそうに李猫が
「あたらしいウサギなら見つけるの手伝ってもいいさ?」
「ムクちゃんじゃないと嫌!ムクちゃんは私のお友達なの!!」
「うううん……僕達で良ければムクちゃん見つけてあげたいんですけど…」
「いや、だが…変えがきかないなら…仕方ないような…きがするが」
「探してあげましょう!!」
アンナがそう言って草原に入っていく、おいおいと思いながらニケ達も後ろを追う。
「タビットさんそこで待っててね、私達探しに言ってくるから!!」
「はい。」
暫く歩いて、アンナは屈み込んだ。つられて会議が始める。
「いい、あんたたち、なるべくそっくりなウサギ見つけたら持ってきて頂戴!!」
「すり替える気か!!?」
「それしかなさそうさ」
「騙すようで悪いですけど、僕達にも責任ありますね」
さすがに肉の塊にリボンはいただけない。
「だがそんな簡単に似たようなウサギ見つかるか?」
「どんな毛並みだったさ?」
ニコルがリュックから毛皮…もとムクちゃんの毛をを取り出す。
「うう、ムクちゃんごめんね…」
「この毛色のウサギならそこらへんにいそうさ」
「一般的な毛並みだものね」
「問題はあの大きさだ…」
とりあえず4人で手分けして草原を探した。
ウサギの痕跡を探しながら行く。

数時間後、探し疲れたアンナのもとにニコルと李猫が戻ってきた。
「このウサギ見つけました」
「此方も生け捕りにしたさ」
「お疲れ様…でもなんかどちらとも小ぶりね…といっても野生のウサギがあんなに丸々になるわけないし」
スラっとした茶色い毛のウサギ、どちらともムクの毛並みほど綺麗じゃないし色も若干くすんでた。
「ニケまだ探してるさ?」
「ニケさんにかけるしかなさそうですね…」
「お願いニケ、いいの見つけて!!」
必死に祈ってる3人の所にニケが現れる。
手には大きなウサギ。
だが、3には喜ばなかった。なぜならそのウサギの毛の色は白かったからだ。
「白いさ」
「白いですね」
「でも大きさは近いわね」
「どうする?2人の持ってるウサギは毛は茶色いが…大きさが足りねぇな」
「あれさ、痩せちゃったということで近い方差し出すさ。」
「うーん誰か魔法でこのウサギを茶色に変えることできないかしら?」
李猫は眉を落として…
「え?妖精さんの力借りて幻影見せるとか?無理さよ」
「やっぱ無難に茶色いウサギ差し出すか…」
「あるいは…スカウトでその白ウサギの毛を化粧で染めるさ」
「変装か…」
「私お化粧道具持ってるわ!」
そいってファンデーションの粉を取り出すアンナ…ニケがその粉を満遍なく白いウサギにふりかけた。ウサギは抵抗したが毛の色は茶色になった。
「ん、バレないバレない」
「いい感じさ」
「大丈夫かこれで?」
「僕は心配です」
そう言いながら、茶色く染めたウサギにアンナはリボンを結んだ。
なんか嫌な予感もしなくもないが、とりあえずタビットのもとへと戻った。

「みつけたぞ、このウサギがそうか?」
「ムクちゃ―――…!?ムクちゃん?ほんとにムクちゃんなの?」
困惑気味に見てくるタビット。ギクリと皆硬直する。タビットは怪しみながらもウサギを受け取ってリボンを確かめる。
「これは…たしかにムクちゃんのリボン。でもこんなにブサメンだったかしら?」
「きっとやつれたさ」
「顔が浮腫んだのよ」
「まぁ、いいわ、見つかったなら。有難う、これお礼のお金…」
「いや、ありがたいさ…」
と、李猫が手を差し伸べたてをべしっとアンナが叩く。ニコニコと作り笑いしながら。
「私たち困ってるひと見過ごせないの!依頼はタダでいいわ!!」
「ああ、タダでいい」
ニケは棒読みで言った。ニコルも作り笑いしながら。
「はい、僕達の気持ちです」
「そうなの?ほんとに親切な人達ね?」
タビットも不思議そうにこちらを見てくるがお金を戻して。李猫が惜しそうに呟いた。
「勿体無いさ…」
「黙れ李猫」
「僕達、急いでるので。これで失礼します!!」
「見つかってよかったわね!じゃ!!」
4人は素早くタビットから離れて歩き出した。
ユーベールまでの道のりあと3日。