李猫の旅


李猫が気がついた時はグラップラーの師匠と旅をしていた。
自分の名前は異国の名前でリーマオということと、6歳以前の記憶がないこと以外は李猫は普通の裏若き青年だった。
ついでに5日以上同じ所にとどまった試しがなく、師匠と各地をてんてんとしてたが未だ自分の故郷を見たことがない。
師匠にどうやって俺と知り合ったのか聞いたら、「お前は桃から生まれてきたんじゃ」とベロンベロンに酔って言うだけだった。
たぶん師匠も俺の生まれや育ちは知らないのだろう。
李猫とは異国の名前だということは話は聞いていた、どういう意味なのかはよくしらない。

李猫は今日も酒場で一人酒を飲んでいた、といっても師匠が見当たらないからこのどうぞ飲んでくださいと言わんばかりのお酒にしたづつみしていたのだが。
6本瓶を開けたところで、師匠が酒場に入ってきて李猫の首根っこをつかんだ。
「これ、李猫またここで酒をこんなに飲んで」
「あ、師匠。どこいってたんだ?ここの酒味がまろやかで飲みやすいんだ、ついつい呑みすすんじゃって」
「ばっかもん、いつもいつも呑んだくれて。そんなテイタラクな弟子に育てた覚えはないぞ」
「なんだよ、酒は師匠も十分飲むじゃないか」
なんで今日に限ってこの人は怒るのだろうと李猫は眉を下げた。
「ええい、ここのツケはみんなお前が払うんだぞ」
「はいはい、お金寄せ集めてきますので、もう一口」
そう行ってると、師匠はずるずると李猫を外につれだした。
反対の冒険者の宿に入ると、つかんでた首根っこをはなして。
「ほれ、しゃんと立て。」
「はい」
引きずってたのは師匠だろうと思ったが、起き上がって目の前に一人男が立っている。師匠は挨拶するようにと進めてきたので、軽くペコリと頭を下げた。
「こいつが話をしてた李猫だ」
「君が李猫君?」
「はい、李猫といいます」
「じゃ、ここにサインして」
「さっさとサインするんだ」
師匠は強引に手を握りペンを持たせて李猫と無理やり書いて年齢も付け足した。
「なんだい?この書類?」
李猫はいぶがしげに聞いた。すると、マスターが淡々と。
「おめでとう、これで君も晴れて冒険者だ」
「そういうことだ、良かっただろう李猫」
いまいちピンとこなかった。冒険者になるとはひとことも言ってないのに、いきなり書面させられて、おめでとうと言われるのは。
「意味がわかりませんよ師匠」
「お前はこれから一人でやっていくのだ、一人前のグラップラーになったら、この師匠倒しに来るのだ。そしたらおまえに奥義を教えてやる」
「え?どういうこ?」
「そういうことだ李猫。お前は修行という一人旅をするんだ。その為にこの冒険者の宿で冒険者登録だけしてやったんだ。わしは別の道を通って旅を続ける」
「酷いさ。師匠。俺を置いて行くなんて」
手を顔を覆いシクシクと泣いてみせるが。すぐにうそ泣きとバレてしまう。
「よいか李猫。わしはお前が立派なグラップラーになって戻ってくるまでお前のことを破門とする」
「あんまりだ、師匠。技なんて何一つ教えてくれなかったのに破門とか」
「お前があまりにも不真面目で酒や遊びばっかりなので根性を叩き直してやる」
そういって師匠はじゃ、あとは宜しくといって出て行ってしまった。
優しい師匠だからこれは、少し離れたところで見ているんだろうなと李猫は思った。
だがその思いは3日たってマジだったことに気がついた。

「うう、お金が無い…」
「だから、働きなさいといっえるだろう君」
ここのマスターのダビンさんはいう。李猫は自分の残金がつきるまでくっちゃねしていた。当然という目で見てくるダビン。李猫はテーブルに突っ伏しながら口を尖らせて。
「なら仕事頂戴」
「依頼料ないと教えられないんだ」
「ケチ」
「社会の厳しさを知りなさい。といっても本当に君はお金ないのだから、食器洗いして基本料金だけ払いなさい」
そう言ってダビンはスポンジを李猫にわたした。
李猫はしぶしぶと皿洗いをしていた。
するとそこに冒険者らしき人が入ってきて。
「すまないが、料理だしてくれるかい?」
「俺、ここの店の人じゃないんだけど」
「李猫、用意しなさい」
しぶしぶと料理を作りに行った。適当に自分の作れる料理を作りテーブルに持って行くと冒険者が哀れそうな顔でこっち見てくる。
「話は聞いたよ、依頼料も払えないで働いてるんだって?」
ああ、話したのかとダビンをみて。コクと頷いて。
「俺、酒場の酒代も払わないといけなくて、借金だらけなんだ」
「可哀想に俺も駆け出しの頃はそうだっただ。どうだろう、マスター俺が依頼料払うから、この子にチャンスあげてくれないか?」
「それは構わないけどね」
「本当?お兄さんいい人!俺一生懸命やるから。どうか仕事ください」
こんなに必死になったことも人生始めてだった。いままでのっりくらりでなんとかなってきたものだから、その調子でいけるかと思ったが残金0は甘くなかった。
「じゃ、仕事あげるから、ちゃんと果たして帰ってくるんだよ?」
こくこくと頷いて。仕事の内容を聞いた。
依頼内容は蛮族退治や遺跡調査とかいったものだった。
今回は蛮族退治をお金を支払ってくれたアレンさんと一緒にその蛮族退治に出かけた。

アレンさんは冒険者としてはなかなか腕が立つ人らしく。蛮族退治はすぐに終わった。
そして依頼料をダビンさんから貰った。
アレンさんがこっちにそういえばとこえかけてきた。
「よかったら、俺と一緒に旅しないかい?」
「いいんですか?」
「俺一人だとさみしいから」
「喜んで」
こんな強いひとが仲間になってくれるなんて李猫は自分はついると思った。
そうしてると、となりの冒険者が何やら話している。ここまで聞こえてくる声だったので耳を澄まさなくても聞こえた。
「おいおい、聞いたか?最近冒険者を狙った物騒な事件があるんだ」
「どんな事件だ?」
「聞いた話だと、一緒に旅の仲間になったと見せかけて、金がたまったところで、ふんだくろうって話だ」
「そいつは酷いな。知らない奴には気おつけないとな…」
それを聞いていたアレンさんが眉潜めて
「けしからん奴も居るもんだな…俺達も怪しそうな冒険者いたら気おつけような」
「そうっすね。」
李猫はあまり自分には関係ないことと思った。自分は金なんて持ち合わせていないのだから。

酒場の借金を返し終わると、李猫はこの街を出ることにした。
アレンさんが次は街に行こうというので、二人で森を抜けようとしたところだった。
森から物取りのような男ったちが囲ってきた。
「さて、やっちまいましょうぜ?」
「く、ただの物取りが!アレンさん早く剣をぬいて」
アレンは動かず手を組んで傍観している。
「はやいとこ片付けろ、目立たないように死体を転がしておくんだぞ?」
アレンはもの物騒なこと言った。
李猫ははっとした。「この近くで冒険者を狙った物騒な事件があるんだ」脳裏にその言葉が浮かんだが、もう遅かった。
「あんた、俺を最初っから狙って…」
「そうだよ、冒険者登録仕立ての物知らずは格好な獲物だからな」
「さすが兄貴です。俺等じゃ怪しすぎるからな、さ、大人しく殺されるんだな」
男たちは3人、アレンが1人。冒険者レべルが低い李猫には不利だった。しかもこっちは一人だ。
李猫は舌打ちして、態勢をとった。
「あ。あんなとこに野蛮そうな蛮族が!!」
「そんな手にはひっかかるか!」
「こいつ、俺達を舐めてますぜ」
「李猫、覚悟をきめること……」
その瞬間、矢がアレンの腕に刺さった。
アレンは腕を抑えなが森を見た。すると周りをぐるりと蛮族に囲まれていた。数は多い。
「く、こんな時に。」
「どうします?数が多いっすよ?」
李猫は素早く目の前の男を足払いをかけてヒックリかえした。
男が態勢を崩してヒックリかえると、李猫は急いで蛮族の方に叫び声をあげなら突っ込んでいった。蛮族は警戒して防御に入るが、李猫はそれを無視して森のに入り込んで行った。
「く、あいつ逃げたな!!」
「なんてすばしっこいやつだ」
「こいつらを片付けないと動けないですぜ?」
「くっ」
周りを蛮族が取り囲んでアレン達はそれ以上追ってこなかった。

李猫は急いでもといた小さな街に戻り、ダビンにアレンがここ最近の犯人だということを伝えた。
警備兵がアレン達を追うことになった。
李猫はそれから一人で旅することを心がけた、もし仲間にするにしても。
絶対に裏切らない、そんな仲間を作ろうと心に決めた。
李猫は自分の故郷というものがどういうところか気になった。師匠の試練と自分の故郷、それを探すことを目的として、自分だけの旅を続けた。

だが、そんな李猫だったが、一人はやはりキツイものがあった。
また道に迷い、MPもつき。腹は空いたが食べれるものはなく。
「うう、死んじゃう。俺死んじゃう。」
こんな時にやさしい仲間がご飯を分けたり、狩りした物を料理してくれたらなと、思っていると、向こうから子供の声が聞こえた。
「人?」
李猫は顔を明るくした「ご飯だ!お酒だ!!」そう思って森を突き進んでいくと、一人のグラスランナーが狼に襲われているところだった。
「あのチビ助けないとな」
李猫は近くにあった石を幾つか拾うと狼に向かって投げた。

これが、のちの仲間になる一人目との出会いだった。

李猫編 おわり