ヴァンの旅 01

ヴァン・アルべールはナイトメアとして生まれたが、その角は小さく、ヴァンの母は死なずにすんだ。
アルべール夫妻は長い間子供が生まれず、母は神に祈ったという。そしたら夢に神様が出てきて「お前に元気な子供を授けよう。子供はすんなり生まれてくるだろう」というので、母は喜び、信じた。
翌年、腹から生まれてきたのがナイトメアだったが、アルべール夫妻は大事に育てた。
ヴァンは角を見せてはいけないと母に言い聞かされて育った。その意味は幼い頃解らなかったが、大好きな母のために村の誰にもバレないように髪の量を増やして、顳かみの後ろについた牛の様な小さな角を隠した。
お告げの通りヴァンは健康で元気に育った。

ヴァンが15歳になった歳だった。ヴァンは恋を寄せていた村娘のアンナと一緒に森の中でデートしに行った。と言っても毎日がデートだとヴァンは勝手に思っていた、アンナのこと好きだというがアンナも「もう、ヴァンたら」といって逸らかすだけだった。
「俺ほんとにお前の事好きだよ」
「そんな事言って、この前他の女の子に声かけてるでしょ、デートしましょうとか、言って」
ヴァンはナンパ症な癖があり、暇さえあれば女の子を口説いていた、だがそれがアンナが振り向いてくれない理由とは思ってなかった。
「うん、女の子好きだ。だけど君といるのが一番好きなんだよアンナ」
「はいはい、何人の女の子そうやって口説いてるのかしらないけど、男友達出はあんたのこと好きよ?」
森の木陰でアンナにいつキスしようか、考えてたら、突然奥のほうから何かが近寄ってくる気配をヴァンは感じた。
「アンナ、そろそろ村に戻ろうか?」
急いでアンナを立たせて、ヴァンは手を引いて村に戻ろうとした瞬間。
強そうな蛮族が二人に向かって襲ってきた。
『こんなとこでイチャイチャしてんじゃなーい!リア充が死ねーい!』
そう言ってるのがヴァンには分かったが、悲鳴を上げてる人間のアンナにそれは聞こえなかったようだ。
ヴァンはアンナに当たらないように盾になると、その身に刃物があたる。
ヴァンは痛かったたが、我慢して、アンナを連れて逃げた、武器を何も持っていないし、この森は普段穏やかでそうそう蛮族が出るような地域じゃなかったため油断していた。
(く、こんな時に限って!)
走ってる途中、アンナに向かってその蛮族はまた刃物を振りかざして、アンナの揺れる長い三つ編みをザクリと切り捨てた。
「きゃー!!」
「アンナ!お前よくもアンナの綺麗な髪を!!許せねぇ!!」
ヴァンは頭に熱くなり、カッとなった。その瞬間角が長く伸びて、大きく立派な闘牛のような角が生えて、肌が青白くなった。ヴァンにとって初めての異貌だったが、ヴァンはそんな事にかまってられなかった。
怒りに任せて襲ってきた敵をその手で掴むと凄い力で、蛮族の首を絞め殺した。抵抗してた蛮族が白目を向いて息絶えた時、ヴァンはやっと正気に戻った。自分の肌の色が可笑しい事に。
頭の角が重くて気になったが、それよりもっとヴァンは青ざめた。見られた、アンナにこの姿を見られた。
だが今更隠したところで遅い、ヴァンは振り返って、なんのこともなかったように振りまいたかったが、振り返ってアンナを見てみたらアンナはまだがたがたと震えていた。
「アンナ、大丈夫か?」
「あなた、あなたはナイトメアだったの!!?ヴァン、信じられない!!あんたなんて嫌い!!」
アンナはそう言って泣きながら村に走っていってしまった。

ヴァンはやっと元の姿に戻り、慌てて村に帰ったが、その時村の皆がこっちをじっと今まで見せたことない、なにか汚らわしいものを見るかのように。
ヴァンはこの時初めて両親がきつく自分に角を隠すように言ってた理由がわかった。
(そうか、ナイトメアってこんなにも嫌われてる存在なんだ)
ヴァンは悲しかったが、アンナに嫌われた事が一番悲しかった、きっともう口も聞いてくれないだろう。

ヴァンはとぼとぼと村人の視線を気にしながら家に帰った。家の前にはもう人だかりができていて、両親は質問攻めに会っていた。
アンナが言いふらしたのだろうか?あんなに同様してるなら、そら、村人もアンナに聞くだろう理由ぐらい。
そう、頭で思ったが、やはり悲しかった、裏切られた様な気がして、嫌、裏切ったの自分だ、ナイトメアの事を黙って偽ってきた自分なんだ。
ヴァンが家に入ろうとしたら、あっさり道を作ってどいてくれた。
「ヴァンおまえ、ナイトメアだったのか?」
友人が困惑した顔で言ってくるが、どう言ったら良いかわからず、黙って家に入った。

父と母はこの事を落ち着かせるために村人と掛け合ったが、村人が「ナイトメアなんかと一緒に住めるか」と行ったらしく、出て行けと騒動になった。
帰ってきて父親は「ここにいてもヴァンの為にならない、3人で街に出ていこう。閉鎖的じゃない街ならヴァンを受け入れてくれるはずだ」と言ってくれたが。ヴァンは両親を巻き込みたくなかった。
「父さん、俺だけ出ていくよ、それに俺15歳だし、もう一人前だろ?冒険者になって見たかったんだ。旅に出るよ。」
きっと、この先移動する先もナイトメアの両親として迫害されるのを恐れたヴァンは、両親と別々に生きていく事を決意した。
本当は冒険者に興味とかなかったが、ヴァンは両親に嘘の口実をつけて言いくるめた。心配していたが。自分の意思は変えられないということ示したので、そのまま行かせてくれることになった。
「ヴァン、私たちはあなたの味方よ、いつまでも。いつでも戻ってらっしゃい。その時は人気のない所で一緒に住みましょう」
「ありがとう、母さん。父さん。こんなに思ってくれて俺幸せものだよ」
そう、言って、俺は旅の準備をして。
次の日の早朝に外に出た。
村から出ようとしたら、後ろから呼び止められる。
良く知った声、アンナだった。
「アンナ、見送ってくれるの?最後に君の顔見れて俺幸せだよ」
いつものように笑ってみせた。
アンナは暫く黙っていたが、ずいっと近寄ってきて。手に青い石を削った小刀のネックレスを渡してきた。
「これを持って行ってヴァン。これはお守りよ私の死んだお婆ちゃんが私にくれた物だけど。良く無いことから守ってくれる幸運のお守りなの」
「これを、俺に?大切なモノなのに…ありがとう、アンナのことをこれで思い出すよ。アンナ、最後にチューしていい?」
アンナは、むくれた顔して。
「なんで貴方にチューされないといけないの?それより、最後にあなたの角触らせてくれる?」
「角………いいよ?」
少し抵抗があったが、減るものじゃないと思って、少し屈んであんなに見せた。
アンナは髪を掻き分けて角を触った。すこし、こそばゆい感じだが悪い気はしなかった。
「何か………そうね、牛みたいな角ね」
「牛!?」
まぁ、いい。きっと自分のチャームポイントなんだろうと思うようにした。
「守ってくれて有難う」
突然そう言われて、横の頬にキスされた。
「あれ?今キスしてくれた?」
「最後だからよ、じゃーね、牛さん」
そう言ってアンナはツンしたがいつもの様に接してくれた。それだけで十分救われた様な気がした。
「ありがとう、アンナ幸せになれよ?」
そう言ったが。それ聞いたアンナは小走りで自分の家に帰って行った。
ヴァンは自分の頭の角を触って、頭の髪で隠し直すと、そのまま村から出ていった。