ヴァンはキュドラ街道を歩きながら首都トルメキアに向かった。ココらへんで一番栄えた大きな街だ、その手前にジャナッツという街もあり、このキュドラ街道はそれぞれ道の先に大きな街がある。
北に行けば川の街ユーベール。北西に行けば、監獄都市エスタミル。南西に行けばエルフの村サマサ。南はザレンの街。南東に行くとジャナッツの街その先には大きな都市トルメキア。今歩いてきた道、北東に自分の村と、コミル湖の街がある。
ヴァンは地図を頭の中に描きながら、自分がこれから何処に向かうか考えた。どこの街も魅力的に思えたが、やっぱり大きな街に行ってみたいと思った。
(だとすると、トルメキアあたりがよさそうだな?)
そう思って5つに別れた街道を南東に向かって曲がる。
「トルメキアまで結構あるんだよな…」
うーんと考えていたが、まず困ったことがあった。
「武器がないや」
旅支度したが、家には武器なんて置いていない。もちろん急いで出てきたので武器屋にも行っていない。
まずは次の街ジャナッツで武器と防具を買わなくてはいけない。
ヴァンは、残金を見てみた。
お金は貯めていたけど、消して裕福とは言えない。
「とにかく、敵が出ないこと祈ろう…」
ここらへん絶対盗賊とか追い剥ぎがいるに違いないと思った。
暫く歩いてると、冒険者らしき男がこっちに近寄って切るのが見えた。
男は人のよさそうな感じだった。
そのまま通りすぎようとすると、男は声をかけてきた。
「君この先のジャナッツに行くの?」
「そうだけど?」
「よかったら、一緒に行ってついっててもいいかな?俺一人だと盗賊とか怖いし」
結構強そうにも見えるが、やはり一人だと、囲まれた時危ないのだろう、それに今の自分は丸腰だ。この男はいちお腰元に剣が挿してある。丁度いい。
「俺は別に構わないけど、俺は丸腰だから、戦いに参加するとなると素手なんだけど?」
「それは丁度い……いや、それは危険だ。そうだ、これ使いなよ?」
そう言って彼はナイフを渡してきた。
「あ…有難う。」
今さっき何か怪しそうな素振りしたが、武器を渡してくるということはこいつ。良い奴じゃないか!と、ヴァンは思った。
「俺の名前はアレン。よかったら君の名前教えてくれるかな?」
「俺の名前はヴァンといいます。宜しく」
「よろしくね、ヴァン君。君は冒険者?」
「は…い、でも、村から出てきたばかりで右も左もよくわからないくて…」
「ははは、そうだろうね。俺も冒険したてはそうだったな。じゃ、行こうか?ジャナッツまでは2日かかるけど。」
歩いて2日、結構ある距離だなとおもったが。アレンがいれば大丈夫だろうと思った。
二人は並んでジャナッツに向かった。
無駄な雑談とか色々として。アランは色々聞いてきたがあまり苦にはならなかった、おしゃべりは好きな方だった。ただ自分がナイトメアだということはバレないようにしようとおもった。
夜になって近くで野宿することになった。
日を起こして、アランがくれた保存食を食べながら。この人とは上手くやっていけどうだとおもった。何かと親切だし。ただ、すこし引っかかるものを感じた。こんなに親切にしてもらえるのに胸のあたりがざわついた。
何だろうと胸に手を当ててみると、アンナから貰った鮮やかな青い石が薄っすらと光っているように見えた。これからエネルギーを感じる。
(綺麗な石だな…ただなんでこんなに気になるエネルギー出すんだろう?)
そうおもっていると、アランがこっち見て。
「いい石だね。高そうだな、どこで手に入れたの?」
「これは貰ったんだ、好きな娘から。お守りなんだ。」
「へー、良い物貰ったね。」
アレンに向けてかざしてると、火の光で石がよく見えた。
何かが写った。よくよく見てみるとそれはアレンが薄気味悪く笑ってる顔だった。その顔は冷酷で獲物を見るかのような目だった。
(なんだ、これ…気持ち悪いな…)
視線をアレンに合わせるが、アレンはニコニコと優しそうに笑っている。
ただ、これがただの目の錯覚には思えない。
ヴァンはだんだんアレンを怪しいと思い始めた。
「ところで、アレンさんはいままでずっと一人で旅してきたのか?」
「ん?いや、そんな事ないよ、ただ出会ったり別れたりしてる、その時限りって多いんだよね〜」
「アレンさん優しいから、皆仲間にしたがるだろう?その仲間とはどうして別れたりしたの?」
「………いろいろとあってね。複雑なんだ。君も複雑な環境なんだろ?もう、この話は止めにしよう。俺はそろそろ寝るね?」
アレンはそうそうに話を打ち切り、ついてた火を吹き消した。
「お休み」
「……お休み」
俺はネタ振りをしたが、アレンがまだ起きてるのは察しがついた。
夜が深まり、獣が寝静まったころ、アレンが動き始めた。
こっちに近づいてきて剣を引きぬいてこっちに近づいてきたのがわかった、ヴァンはナイフを見えないように隠し持った。
アレンがもう一度寝ているか確かめて来た。
「………」
「………」
アレンは剣を翳した。
だが振り下ろされる前より先に、ヴァンは素早くアレンの喉元にナイフを当てがけた。
「何しようとしてるんだ?アレンさん?夜這いなら勘弁だよ?」
「なんだ、起きてたんだ…いや、ちょっとね…物音がしたから賊でも来たのかと思っておこそうと…」
「賊はあんただろ?親切なフリして寝静まった所を狙うなんて、卑怯だね?」
アレンは不敵に笑った。
「ま、今更だね。でもそんな事どうでもいい、君には死んでもらうよ」
「その前にこのナイフであんたの喉元掻っ切るよ?」
喉元に刃物を当てられてるのに冷静だ。どういうことだろうと思ったが、アレンは涼しい顔で。
「そのナイフは切れないよ?君は丸腰なんだ」
どうやらナイフに細工をしたというらしい。使えない剣を渡して油断させたのだろう。
アレンは剣をこっちに向かって振り下ろしてきた。
ヴァンは剣をナイフで払いのけ、屈んでるアレンを突き飛ばした。
ナイフは砕けたがヴァンはアレンにそれを投げつけた。
そのままヴァンは走りだした。
「く、大人しく殺られればいいものを…」
後を追って来るアレン。
ヴァンはそのまま走って物陰に隠れた。
後から追ってきたアレンは俺の姿を見失い、身を隠してる近くに立ってあたりを探している。
「逃げられたのか?おい、お前等、そっちには行ったか?」
「来てやせんぜ、兄貴!」
向こうの方から賊らしい男たちが現れた。ヴァンはさらに身を潜めた。この人数だ、見つかったら勝てっこないし、すぐに見つかりそうだ。
「そんなに遠くに行ってないはずだ。探せ」
「へい!!」
アレンは足跡を探してるようだった。
(見つかりませんように…見つかりませんように…)
祈ってみたが、アレンはどうやら足跡を見つけたようで、こっちに向かって近寄ってくる。
(ち、素手で戦うしかないのか?)
覚悟を決めていたが、アレンは近くに見てもう見えても可笑しくないのに。ずっと回りを見渡して、襲ってこない。
「可笑しいな、足跡はここまで続いてるのに…姿が見えない。ここに隠れたとしてもすぐに道かるしな…」
(どういうことだ?見えてないのか?俺のこと)
ヴァンとアレンは目と鼻の先だったが、アランはこっちに来ない。
ヴァンは試しに立ってみたが、それでも見えてない。
「兄貴、どこにもいませんぜ?」
「ち、なんて運のいいやつなんだ!!」
アレンは悔しそうに土を蹴って。
「ちゃんと、探せ!」
そう言って、向こうの方に歩いて行ってしまった。
一体どういうことなのかヴァンには分かったが、助かったのでほっとし、急いでその場を離れることにした。
休まずに街道をあるいて、ヴァンはジャナッツまで行った。ジャナッツについたときにはもうクタクタだった。
眠たい顔でフラフラしながら、とりあえず宿に泊まった。
次の日、目が冷めたがほとんど寝ていて昼になりそうだった。
体を起こして背伸びをして…まわりを見た。
どうやら、宿に宿泊するのを決めて部屋に入ってそのままベットでぶっ倒れるように寝てたらしい。
「あー、お腹すいた…」
とりあえず、タライに水がはってある。そこで顔を洗って。髪をちょっとセットした。鏡が欲しかったがないので感覚だけで髪を整えた。
部屋の外にでて、下のご飯食べる床でご飯を食べることにした。
「おはよう。昨日は良く寝れたかい?君ふらふらだったけど」
店のマスターさんが声をかけてきた。
「はい、お陰様で…あ、珈琲と簡単な朝食ください」
マスターは珈琲をついで、調理場にランチセットを頼んだ。
そういうや、もう昼だったけ?と思ったが。どうでもいいかと思い、出された珈琲を飲んだ。
「早速だが、以来の方なんだけど、君武器買ってきてくれないかな?ヴァン君。」
「あれ?なんで名前しっているの?」
「昨日冒険者登録しただろう?」
そう言って冒険者登録の紙を見せてきた、汚いミミズがのたうったような字で自分の名前と歳が書いてある。
「あれ?いつの間に?」
「君眠そうだったからね。冒険者登録すると返事したから書いてもらったけど。やっぱり、聞いてなかった?登録破棄するかい?」
困ったお様にマスターが眉を落とす。
「いえ、大丈夫です。冒険者にはなりたかったので…ただ説明は覚えてないです…」
「しかたないね、もう一回説明するよ…」
そう言って、マスターは話し始めた、俺は運ばれてきたランチを口に入れながら、頷いたりしながら話を聞いた。
「はいはい、依頼はお金を払って、仲間と依頼をこなせばいいんだね?」
(仲間か、誰を仲間に入れないといけないのか…だったら女の人がいいな、あと美人がいいな。あと、強いといいな)
そんなこと考えてると、奥のほうに冒険者らしい人たちが固まっていた。
中でも一番美人そうなエルフの女の人を見つけた、ヴァンは尽かさず、女の人に近寄って。
「お姉さん、かわいぃーね☆」
「はぁ?」
女の人は困った顔して。
「私のこと?…うん、そう、有難う?ナンパ?」
「俺はナンパしてません。今仲間を探しているんです、良かったら俺と一緒に、パーティーを組みませんか?もれなくデートがついて来ます」
「結局ナンパじゃない?うーん、どうしようかしら?」
そう言って、女の人は向こうに立って反してる男達に。
「この子、ナンパしてきたんけど、どうしたらいいかしら?」
バトルアックスを持った、頬に傷のある男が顔しかめて。
「知ったことか、ばばぁ。断るなり、デートするなり勝手にしろ」
「いや、私は構わないぞ、デートでもしてこい。」
もう片方のルーンファークの男が困った顔で言ってくる。
「なんか、仲間探してるみたいなのよ?どう思う?」
(なんだ、仲間いたのか。どっちも男だな…)
男どうでもよかった。でも強そうな兄さん達だ思った。
小首をかしげて傷のある男が。まじまじと見てくる。
「このチビ丸腰じゃねーか」
「いや、武器今から買いに行くだよ」
「はぁーん、よく今まで生きてこられたな?」
大きなお世話だが、全くそのとおりなので笑って誤魔化した。となりのルーンフォークが男をやれやれといったように見て。
「絡まない、お兄さんだろお前。私は構わないぞ?一人ぐらい増えても。」
「うん、あなたがそう言うなら加えてもいいかもね。悪い子そうじゃなさそうだし…」
「好きにしろ。足手まといなら、追い出すからな?」
どうやら仲間にいれてもらえそうだ。ヴァンはペコリと頭下げて。
「俺、ヴァン・アルベールといいます」
「私リサよ」
「私はクライヴという。宜しくヴァン君」
「俺はアントニオ」
「よろしく、俺武器買ってきます」
「ああ、行って来い。」
自分の武器が何がいいか考えた。
リサはスタッフを持っいる、アントニオはアックス、クライブは銃を持っていた。
と、言うことはバランス考えて自分は剣がいいだろうなと考えた。
ヴァンは皆から離れて宿を出て、武器を買いに行った。
近くの武器屋に入る、そこで色々と剣を見て、手にとって見て遣い心地さを確かめた。どうやら重たい武器はあまり性に合わないらしい。
「ぎりぎり持ててサーベルかレイピアだな…」
サーベルのほうがデザインがよかったので、レイピアを戻して、サーベルを買うことにした。武器屋のおっさんが防具も売ってるというのでソフトレザーと盾を買った。あと、魔法発動体をかってみた。
そこで残金がやばくなったのでそれ以上買えなかった。
依頼料がぎりぎり足りるか足りないかぐらいだ。
「うう、お金が…早く溜めないと…」
みんなの所に戻ると、皆がマスターから話を聞いていた。
なんか仕事の話をしていた、依頼だろうか?そう思って横に立って聞いていた。
アントニオが口を開いた。
「つまり、蛮族から奪われた品を取り返してくればいいんだな?」
「どんな蛮族だったのかしら?」
リサがうーんと考えて。
「レッドキャップとか?」
「どうだろうね、とにかくその襲われた場所まで行ってみる必要があるね」
どうやら、蛮族退治らしい。
ヴァンは話を半分しか聞いてなかったが、大体わかった。
とりあえず、今から倒しに行くわけだ。前金を払うらしく、皆自分の分を出した。ヴァンも自分の分を出すと。皆と一緒に外に出た。
暫く歩いた森の中で依頼者は襲われたらしく、命からがら逃げてきたが大事な荷物が入った物を取られたらしい。
「大事な荷物ってなんだったの?」
「リュックの中に入ってたらしけど、大事な事が書かれてる本らしいわよ?詳しくは教えてもらえなかったけど。希少価値があるんじゃないかしら?」
「ふーん、何が書かれてたんだろうね?」
「ま、その依頼人もよく逃げてこられたもんだな。」
襲われたと聞いた地点まで来て、周囲をみた。どうやら蛮族らしい姿は見つからない。
「いないね?」
「足跡をさがせばいいじゃね?お前も探せ。」
「はいはい」
屈んで足跡らしいものがないか探してみた。周りを見てみると、何かが通ってきたであろう、茂みが荒れている場所を見つけた。
「あった、こっち行ったんじゃないか?」
「でかしたわヴァン君」
「じゃ、行ってみるか?」
「そうだな、私は後方を歩く。君たち先に歩きたまえ」
先に入っていったアントニオの後にヴァンは続いた、その後をリサが歩きその後ろをクライブが歩いた。
暫く歩くと、折れた茂みが二方向に分かれていた。
「どうやら、この2つとも出来て2時間は立ってるな。」
「へー、時間までわかるんだ凄い、兄さん」
「俺ぐらいになるとな、経験いっぱいつ出てそんぐらいのことはわかるんだ」
そう言いながらアントニオはどっち行こうか迷ったが、道幅がすこし大きめなほうに向かって歩いていった。
後をついていくと、後ろでリサ「きゃ、草がささった!被れちゃう!!」とか言ってるのが聞こえたので、草木を少し倒して歩けるようにしておいた。
暫く歩いた時、アントニオが急に身を潜めた。反射でヴァンも身を屈める。
奥の方で蛮族3体がリュックをひっくり返して中身を物色していた。
中から衣類やアイテムをそこら中に散らかして、いた、一匹の蛮族が手に本を持っていた。
『なんだ、この本?』
『ご飯入ってないよー』
『こんな本破いちゃえー』
ヴァンはハッとして、小声で皆に言った
「あいつら、本破こうとしてる。止めないと」
アントニオがこっちを見てきて。眉をひそめる。
「おいおいなんでそんな事が分かるんだ?」
自分が蛮族の声が聞けるといったら、ナイトメアとバレてしまう。そしたら皆に「ナイトメアなんて仲間にできない」とか言われるのが怖くて、ヴァンは焦って誤魔化した。
「勘だよ。ほら、遊んでるし。ああいう野蛮な生き物が物大切にするとは思えない」
「それはそうね、破かれたら大変ね。」
後ろでリサが困ったような声をだす。
アントニオはじとーと見てきたが、まぁいい、とアックスを構えた。
「先制攻撃できそうだな」
「私が先に銃で持ってる本を落とす、そしたら攻撃してくれ」
クライヴが銃を構えた。射程を合わせて、蛮族の手を打った。
蛮族の手に当たり、ギャッと悲鳴を上げて本を離した。
銃声を合図にアントニオとヴァンは蛮族に向かって走って行った。アントニオはクライブが狙った蛮族を狙ったので、こっちはその隣りのびっくりしてる蛮族を狙った、サーベルで蛮族を挿すと、蛮族はギャーと言って、刃物を反射的に投げてきた、ヴァンはその刃物を盾で防ぐ。後ろからリサの魔法が飛んで来た。それがヴァンの相手してる蛮族に当たると、その場に蛮族は倒れた。
アントニオはあっという間に敵を倒した、さすがに皆おれより経験を積んだ冒険者だなと感心してると、ヴァンに向かって残りの蛮族が襲ってきた。
それを剣で伏せでいると、アントニオが背後から蛮族の背中を斬りつけて、倒した。
あっという間だったな…とヴァンは肩の力を抜いてほっとしていると、リサの悲鳴が聞こえた。振り返ると、蛮族がまだいたみたいで、リサ達の後ろから攻撃している。
ヴァンとアントニオがダッシュで向かう。
「その人を傷つけるなー!」
ヴァンは走っているうちに自分が変貌してることに気が付かなかったが、勢いまかせにリサと蛮族の前に立ちはだかっていた。蛮族に思いっきり攻撃を代わりに食らったが、近くに来たのでそのまま蛮族の首めがけでサーベルを挿した。蛮族は苦しそうにもがいて、絶命した。
「あら、ヴァン君。貴方…」
「あ。」
しまった、また変貌してると気がついて、せっかくバレないようにしてたのにバレてしまった。
「ナイトメアだったんですね」
「だから、最初から言えばいいのに…怪しいと思ったんだ」
クライブが普通にこっち見ている。
リサは少し驚いただけで「有難う、かばってくれるなんて紳士ね」と言ってクスっと笑っている。
面倒臭そうにしてるアントニオも別に変な目で見てるわけではない。本と荷物を回収して来て。
「さて、本も手に入ったし、さっさと戻るぞ。ヴァンいつまで変貌してる気だ?」
「え?なんで皆驚かないんだ?」
あっけに取られたのはこっちの方だった。不思議そうに皆を見ると。
「見慣れてる。ナイトメアなんて」
「偏見ないのよ。」
「嫌う必要がないだろ」
それぞれがなんとも思っていないようなので、ヴァンはほっとした。
「てっきり、ナイトメアとバレたら嫌われるかと思ったよ」
「まぁ、ナイトメアだから迫害経験もあって姿偽ってたんだな。まぁ、わからんでもないな」
「ナイトメアって力強いから私は歓迎よ。それにしても君の角、あれね…」
口ごもる。
「ん?カッコイイとか?」
「いや、闘牛の牛みたいだとかいいたいんだろ?お前のあだ名は「牛」だ」
「えええええ?」
アントニオがかったるそうな口調でそう言った。
いささかショックだったが、もう、なんでもいいやとおもった。
異貌を解くと、皆で冒険者の宿に戻った。
ナイトメアが普通に仲間として見られるのは普通の事なのだろうか?それとも自分が運がいいだけなのだろうか?ヴァンはそう思いながら皆の姿をちらりと見る。
皆笑っている。
ヴァンも笑顔が溢れてきた。胸にぶら下がった青い石が太陽の光で光った。