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ジミー再び

 

 


  僕はジミーさんと再び会うことになった――。

 ジミーさんは夢の中の住人だ。
  僕をいつもお茶会に招待してくれていた。小さい頃から、ずっと。
  だんだん会う数が減っていった。
  再び会うことになろうとは、僕は予想もしていなかった。

「やあ。久し振りだね、アルベルト」
  ジミーさんは柔和に笑い、手をふった。
  ジミーさんは草原の中で、白い鉄であつらえた椅子にこしかけて、同じ色のテーブルにお茶を用意して待っていた。
  僕は懐かしいジミーさんのお茶会にまた招待されたこを少し嬉しく思ったように感じる。
  感じる? うん、感じている、はずだ。
「久しぶりです」
  久しぶりに会ったジミーさんの正面に腰掛け、僕は遠慮なくクッキーに手を伸ばす。
  ジミーさんは昔とちっとも雰囲気が変わってなかった。
  相変わらず、ふんわり笑う人だ。そして何を考えてるかわからない。
「大きくなったね。前に会ったとき君はとても小さかった。人間の年齢でいくつになるんだい?」
「18歳になります。ジミーさんはいくつなんですか?」
「人間の時間で計算しづらくてね。暦が違うから」
  ジミーさんはそう言って紅茶に口をつける。
  僕も紅茶をいっしょに飲んだ。レモンティーだった。
  少し甘酸っぱくて、やわらかい味がした。
「そういえばこの前、君を久しぶりに夢で見かけたよ」
  ジミーさんはにこにこ笑いながら、頬杖しながら言った。
  うっすらと目を分けて、彼は小首を傾げる。
「また夢の世界にくるきっかけはなんだったの?」
  僕は少し、動きをとめた。
  何か今、感じた。
  ジミーさんの唇が動く。
「君にまた会えて嬉しいんだからさ、色々教えてほしいよ」
  僕は視線を伏せた。
「兄を探すために、夢が必要だったんです」
  紅茶をごっくんと飲み込む。
  レモンの清涼感は、喉の奥へと消えていった。
  僕はそのレモンティーの喉越しよりも、ずっと先ほど感じた喉のつっかえの正体を探っていた。
「そうか。見つかったのかい?」
「見つかりました。怪我はしていたけれど、無事です」
「それはよかった。お大事にしてくださいと伝え……るわけにもいかないね。僕はあくまで現実では、いない存在なのだろうから」
  ジミーさんは眉をハの字にして困ったように笑う。
「そうそう、アルベルト。下界のことなんだけどさ、朝起きたら絶対に、西ドヴァーラの第五区画に今日行ってはいけないよ?」
「……なぜですか?」
「ともかくそこで、事件が起きるからだよ。相手は男で、君よりも10センチも大きい。手ぶらで歩いてるように見えるけど、腰に銃をさしている」
「そんな腰に銃をさしてる人なんて、リチェ国にはあちこちにいますよ。ジミーさん」
  ジミーは目をうっすらと笑わせていた。
  だけど心から笑ってる顔ではなかった。
「君にまた夢で会いたいだけだ。現実で死なれたらもう会えないのは寂しい。心配しているんだよ。次は君とチェスがやりたいな。また会おう」
  そこで僕の視界は、暗く閉じた。
  再び目を開いた時、僕は部屋のベッドで寝ていた。
  若草色のカーテンを通して朝日が部屋を照らしている。
  まるであの草原を歩いてるときの延長上で始まる、僕にとっては片方の真実で、お兄ちゃんにとっては現実という名の、鏡合わせの世界。