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今日から魔女の家にお引越し!

 

 

  部屋の片付けがようやく終わった。
  アルベルトは新居での荷解きが一日で完了したことにほっとした。
  明日は一日休むことができそうだ。
「アルベルト、飯できたぞ」
  兄のギルベルトが珍しくごはんを作ってくれたようだ。
  ギルベルトはアルベルトを呼んだあとすぐにダイニングにいってしまったようで、アルベルトは後ろをすぐに追いかけた。
  ダイニングにあったのはヌードルのカップが2つ。
  味付けはサルサ味と書いてある。
「……ごはん?」
「ごはんだろ。カップラーメン」
「兄ちゃんいつか絶対成人病になるよ」
  せっかくごはんを用意してくれた兄に対して失礼かなと少し思ったが、思わず思ったことを口にしてしまった。
  ギルベルトはさして気にした様子もなく、フォークを使ってヌードルを啜る。
  アルベルトも久しぶりのジャンクなカップヌードルの味を美味しいと感じた。

 今日から双子だけの二人暮らしだ。
  子供の頃からの夢だった。おじいちゃんが育った実家――魔女だったひいおばあさんが住んでいた家に住むのが。
  おじいちゃんに家をちょうだいと言った小学生のとき、おじいちゃんは「家の中を綺麗にできたら住んでもいい」と言ってくれた。
  おそらく子供にそれほど根気は続かないだろうと高をくくっていたのだろう。
  しかしアルベルトは何年もかけて伸びに伸びた雑草を始末したり、部屋の中を掃除したりした。
  部活のない日は兄のギルベルトもアルベルトの背の届かないところに漆喰を塗ってくれたり、重たい荷物を運ぶのを手伝ってくれた。
  10歳の頃から少しずつ始めた家の大掃除は、雑草がまた伸びたり、綿埃がまたたまったりとやってもやっても終わらない作業にも思えた。
  ようやく住めるような状態になったのが18歳の秋の頃だった。
  アルベルトは両親にこっちで住みたいと伝えた。
  母親は快く承諾してくれた。父親も双子で住むならばお互い助け合えるだろうと言って承諾してくれた。
  問題はギルベルトがいっしょに住んでくれるのかということだったが、こちらも新しい家を探す手間が省けたと言ってひいおばあちゃんの家に住むと言ってくれた。
  こうして魔女だったひいおばあちゃんの家は、今はアルベルトとギルベルトの家になった。
  ひいおばあちゃんが使っていた魔女の実験セットの類は、きちんと箱に仕舞ってアルベルトが今も管理している。
  たまにフラスコや試験管でハーブの蒸留などをしていると、後ろからギルベルトに茶化されることもある。
  しかし長い間いっしょに暮らしてきた双子はお互いのことをよく知っている。
  おおむね上手くやっていけるだろうと予想がついた。