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此処に終わりを宣言しようもう誰も傷つくな哀しむな どうか

古代魔族そのものが絶滅品種だというのに、その古代魔族がわざわざパスワードを解読しにきたということでセレスティアルパレスの学者たちは騒然とした。
ラーラは普段どおり、僕の買ってあげたワンピースをひるがえして、はだしでぺたぺたとセレスティアの核のある道までを歩いていく。
僕とアスセナはそのちょっと後ろを歩いている。
彼女は案内されたそのセレスティアの上に手を置くと、誰も知らないような古い言葉をぶつぶつと唱えはじめた。
空気がびりびりするのがわかる。あんな大きな天然石が呼応しているのだ、波動が伝わってきたっておかしくはない。
ラーラの古代魔法を紡ぐ言葉はそれから一時間くらい続いた。そして、セレスティアの核が銀色の光を放ったかと思うと、セレスティア大陸に引力がかかるのがわかった。逆の方向に動くような違和感を感じたあと、ラーラがこっちを見て笑う。
「終わったよ」
終わったんだ。もう、何もかもが。

帰り道、僕はアスセナとラーラにはさまれた状態で太陽の都の中心街を歩いていた。
アスセナは前ほどカリカリしてなかったし、ラーラはいつもどおりだったかな。
「ねえ、ラーラ、何か食べていく?」
これは僕ではなく、アスセナがラーラに聞いたのだ。ラーラは振り返って「ラーメン!」と答えた。ラーメン、うん、僕もラーメン好きだよ。
「トラ族のおばちゃんでめちゃくちゃラーメンの美味しい店あるんだけど、行く?」
「行く!」
「ちょっと、ミッチェル。そんな美味しい店あるのにどうして教えてくれなかったのよ?」
「アズッロ隊長の内緒の店だからだよ。僕が他の人に教えたとあったら、何言われるか……」
でも今日は特別なんだ。なんせセレスティアを、世界を、アウィス・ラーラが救った日なのだから。
「鶏がらのね、透明な醤油ベースのスープかな?」
「ううん、豚骨スープなんだけれども、醤油ベースのこってりしているやつ」
「それ美味しいの? ミッチェルさん」
「たぶん気に入ってくれると思うよ」
始終そんな感じで僕とアスセナの周りをちょろちょろとしながらラーラは楽しそうだった。
「今度エニグマも連れてきていい?」
「教えちゃだめって言われたばかりでしょ、ラーラ」
アスセナが困った子をたしなめるような口調でラーラを叱った。並んでトラ族のラーメン店に入ると、僕たちは並んでラーメンを食べた。

此処に終わりを宣言しよう。誰も傷つくな、哀しむな どうか……

みんなでしあわせに

(青い鳥をつかまえて 了)