「魔女狩りが始まってから人が死にすぎてるわ」
魔界の最近の話題ときたらこればかりだ。
黒魔術を使う魔女など実際はそんなにいないというのに、人間ときたら、財産目当てでどんどん若い女を殺していくのだ。
「このままじゃ一大事よ。効率的に人間の負の感情が摂取できないと魔界は住みにくくなっちゃう」
アメリーはマモンやアスモデウスのところにだけ負の感情がいくことをすごく毛嫌う。
仕方がないのだ。飽食は豊かな時代でないと起こり得ないのだから、こんな時代には悪食の悪魔たちだって貧しい感情しか食べることができない。
「ジミー、あんた最近幸せそうね」
姉のいきなりの言葉に首をかしげる。紅茶を飲みながら、ジミーはアメリーを見た。
「幸せそうに見えますか?」
「まるで恋をしているような顔よ。ああ、恋をしているのね。人間と恋をしているのね、発情期なのね、どんな男なの?」
「男じゃありません。女性ですよ、ちゃんとした」
「つまらないわ」
身も蓋もない言い分だ。
ジミーの呆れたような表情に、アメリーは「恋はいいものよ」と言った。
恋がいいものかどうか、そんなことはジミーにとってどうでもよかった。
悪しきものだったとしてもシャルアンティレーゼに恋をしていただろう。
許されぬ感情だとしてもシャルアンティレーゼに恋をしていただろう。
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