キャラメリーゼのカスタードタルト、タルトタタン、田舎風アップルパイ、ニューヨークアップルパイ、クランブルアップルケーキ、アップサイドダウンケーキ、ヴァニラ・アイスにリンゴのフィリングを混ぜたもの……
見事にリンゴづくしのテーブルの上で、目をきらきらとさせている妖精をジミーは見た。
包丁を片手に、ちまい妖精、ユアを見る。
「本当に食べきれるのか?」
「食べるに決まってるじゃない。当然よ!」
「おう、ならいいんだけど」
俺でも食べきれないぞと思いながら、ジミーは彼女が食べやすいようにパイにナイフを入れて切り分けた。
ユアは小さな口のどこにそんな顎の力があるのかという勢いでりんご料理をどんどん口に運んでいく。
ジミーは近くにあった一切れのタルトを口に運び、紅茶を口に運ぶ。
「ちょっと、ジミー! 私の分なのよ」
「わかってるよ。これ一切れだけだって。そんな甘いもんはたくさんいらん」
タルトの上にアイスクリームをのせて口に運び、ジミーは考える。
こんな甘いものは一切れもあれば十分おなかいっぱいだ。
一生懸命小さな口でりんごと格闘しているユアを見て、ジミーはふと呟いた。
「りんごってさ、白い花じゃん?」
「うん?」
口に食べかすがいっぱいついている顔でユアが顔をあげる。
ジミーはどう言うべきか考えあぐねた挙句、近くにさしてあった花瓶からひとつ、りんごの花を摘んだ。
「可愛い可愛いユアちゃんはお花の妖精って言うらしいし? これくらい可愛いお花も似合うんじゃないかって思っただけ」
ナイフで先を割り、簡易な白い花の簪をつくってユアの髪を結ってみる。
彼女の髪を引っ張り過ぎないように気をつけたが、やはり強く引っ張りすぎたようで彼女の顔は邪魔だとばかりの表情だ。
「できたよ。ほれほれ」
鏡がなかったから、よく磨かれたナイフの表面を向ける。
やや身じろいて、ユアは鏡に映る自分を確認した。傷つけるつもりは今はないのになあと思いながら見ていると、今度は刃物だということも忘れて張りついている。
「可愛いじゃない! もらってやってもいいのよ」
ジミーは小さなユアのいばりんぼな姿にちょっと苦笑いを浮かべた。
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