「カボチャ、最近元気ないな」
図書館でぼんやりしていると、友人のグリードが声をかけてきた。
「俺だって元気なくなることくらいあるわボケェ」
「なんだよ、振られたのか?」
「それ通り越して最悪だわ。かつてないほどのジミー・ザ・リッパー終了のお知らせ」
「なんだよカボチャ廃業すんの?」
「しねーよ。ああ、まったく……」
ふてくされて机に寄りかかっているジミーの隣にグリードが座る。
横目でグリードを確認した。グリードがじっとこちらを見ている。
「珍しく落ち込んでるな。お前」
「おっぱい」
「落ち込んでる」
「◯◯◯◯」
「そんな禁止用語言っても落ち込んでるし」
「うっせーな。ほらほら、元気なカボチャだぞ。殺せよ」
「いつもと逆のこと言ってるぞ」
だんだんめんどくさくなってきて、ついには励ましてくれるグリードに背中を向けてしまった。
グリードに悪いことをしたと思ったのは随分経ってからだが、彼も仕事があったらしくそのときは探しても見つからなかった。
来る日も来る日も落ち込んでいて、ヤバイと感じるが、今のジミーにはカボチャをかぶってはしゃぐ気も沸かない。
さみしそうにしているカボチャヘッドに語りかける。
「お前もシャルを愛してたか?」
カボチャはこちらを見つめているだけだ。
「くっそ。お前みたいなドテカボチャにシャルアンティレーゼをやると思うのかよ」
カボチャは罵られても何も言わない。
「愛してたよ愛してたよ愛してたよ。愛ってなんだろうな? メフィストフェレスが言うみたいにさっぱりわかってなかったのかもしれねーよ」
カボチャはジミーを慰めない。
「なあ相棒。お前が他の奴らが言うみたいにカボチャが本体で俺がおまけだとしたらどうする? 愛してるって言う意味はもうなくなったぞ。それでもシャルアンティレーゼを愛してるか?」
カボチャは自分で考えろとばかりに答えない。
「愛してるよな! シャルアンティレーゼが好きすぎて今日も発狂して誰かを刺したい。よし、握手しよう。お前はやっぱり俺の相棒だ」
カボチャには手がなかったから頭を撫でた。
「なあ。俺、人間として生きていた期間、何人かの女と結婚したり子供育てたり、死んだり、お前でよかったよって言って死んだりしてた。俺なんでシャルがいいんだろうな? シャルは、俺の親戚らしいじゃねえか。しかも俺の姪孫(てっそん)なんだぞ。血が濃いとか関係ないけれど、やっぱりおかしいだろ。なあ、おかしいよな」
カボチャは何をいまさらと答えない。
「大伯父から愛なんて告白されたらどんびくわ」
カボチャは気にしていない。
「気持ち悪いよな。俺」
カボチャは無言だ。
ジミーはカボチャをぽかりと殴る。
「すまん。つい手が出た」
カボチャの頭を撫でる。
「もう会わないって思えたらどんなに楽なんだろうな……」
カボチャは答えない。
少しだけジミーの感情を反映して寂しそうに見えたような気がした。
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