生きるか死ぬか、それが問題だ

「死ぬのはよくない」なんて言わない。
  ただ「死ぬくらいなら、苦しいこと全部を否定して全てから逃げちゃえばいい」と思っているだけ。
  正義が勝つとか思ってないけれども、生き残ったら勝ちはちょっと思う。

 そんな私でも、死んだほうがマシだと感じることがいくつかある。
  その中で一番にくるのは「最大級の苦痛」だ。
  飢えるとか、痛いとか、呼吸できないとか、寒いとか、そういうのってすごく怖いと感じる。
  死んだほうがマシと感じるくらい苦しいのに、死にたくないがための本能だなんて、なんだか矛盾していやしないか、と思う。

 溺れたときに息ができないのを想像するだけでぞっとする。
  お腹が空いても何も食べるものがないのを想像しても怖くなる。
  腕や足が切断されたら、とても痛いだろうと考えるのもとても怖い。
  ともかく生命に関わる生理的な苦痛は全部苦手だ。得意な人もそんなにいないのだろうけれども。

 人間というのは本当によくできた生き物だなあと感じる。
  私が死んだほうがマシだと感じた苦痛が、私を生に執着させているのだから。
  別になんともないやと思うことが多い人は、死にたいとも思わないけれども生きたいとも感じないのだろう。

 死にたくなるほど怖いと感じるものは、ひとつくらいあったほうがいい。
  そうすると人の「怖い」という感情も理解できるし、本当の怖いという感情を消すのは勇気ではなく、逃避という逃げなのだと知ることができるのだから。