神様に余計な主義主張があるなら、と考えた

 神様という存在には主義主張がないからこそ、すごく安心する。
「お前今日から人間失格。エデン追放」とか絶対的に反論できない存在に言われようもんならば、とてもこわい。
  物理法則とか神とかロゴスとか、そういうものは意志は伝わったり働いたりするけど、主義主張はないから安心するのだ。

 たとえば友達が体重計に乗ったら3グラム、私が乗ったら体重計壊れるとかいう、そういうひどい主義主張する万有引力とか、やめてほしいと思う。
「お前だけ足にかかる重力30倍なー」とか「こっちは摩擦なくていいよ」とかも困る。
  歩けない人と、地球の表面を永遠にすべり続ける運命の人がいることになる。
  摩擦はネガティブな意味で使われることが多いけど、とても大切なのだ。
  厳密に考えると摩擦ゼロって、たぶん立つことすらできない。
  寝たままずっと平面も、でこぼこ道もすべっていって、崖があると滑空して、着地しても摩擦がないからさらにすべり続けて、木にぶつかっても止まれない。
  排泄もすべりながらだし、すごいスピードで移動するから邪魔だし、死んで腐ったあともきっと滑り続けるからすごい異臭だろう。
  きっとすごく嫌がられる。そういうときにきっと、重力30倍の人の出番がやってくるのだ。
  普通の人だったらそんなスピードで移動している人を止めることはできないが、きっとそれだけ踏ん張りの聞く人ならば、止められる。
  そして周囲はそんな人に拍手を送るのだと思う。よくやった、と。
  だけど摩擦のない人も、重力が30倍の人も、きっとあまり嬉しくないに違いない。

 物理法則に主義主張があったらそれだけ怖いのだから、神様に主義主張があったらもっと怖いことが起こるんじゃあないかと思う。
  神だから、きっと人間の想像だにしないことを思いつきそうなことが一番怖い。