03/09
卒業式が終わったあとに、山田と篠宮さんと英田と途中まで帰って分岐点でばらばらになって帰った。
山田が篠宮さんに鞄を持たせていた。じゃんけんしながらどっちが持つかとか話している。荷物もちなんて小学生の延長線上でずっと生活しているからあのふたりはずっと発展しないんだと思う。
同じ家に住んでいてあれだけ進展性ないと僕が手を出してもいいのかとか考えちゃうからもうちょっと山田にはしっかりしてもらいたいよ。
その日の3時……電話がかかってきた。
――もしもし、三芳玉青さんですか? ●●出版社の多田と申します。
「はい、僕です」
――あなたのシナリオを原作に小説を書きたいと仰る先生がいるんですが、篠宮さんの実話を使わせていただいてもけっこうですか?
「は?」
――受賞はしませんでしたが、原稿料はもちろんお支払いしますので。どうしましたか? 三芳さん。
上条聖司、覚えていやがれ。よりによって僕の書いたあの恥ずかしいメモリアルを出版社に送っただなんて。ん……待てよ?
「あの……原稿料ってどれくらいになりますか?」
――詳しくはまだ決まっていませんが、かなり有名な先生が書きますので5万は送るつもりです。
「できれば篠宮さんが引っ越すためのお金を用意してくれませんか? 家計を分ければ篠宮さんにだけでも生活保護がかけられるんです」
――難しいかもしれませんが、先生に聞いてみますね。
しばらくしてもう一度多田さんから電話がかかってきた。
――もしもし? 締め切り近いし、どうしても使いたいネタだそうなので、満額支払います。
「本当ですか?」
――嘘ついてどうするんですか。先生も彼女に幸せになってもらいたいみたいだし。君は本当に交渉の上手な子だよ。原作のところに君の名前が載るからPNを考えておいてくださいね。
電話が切れる。
……え、名前載るの? 三芳玉青とか実名使うのはあまりにも恥ずかしいんだけどどうすればいいんだろう。
そういえば玉青ってサファイアからなぞらえてつけられた名前だったかな……いいや、サファイアで。