異能が消えてしばらくして気づいたことがある。黒兪華が消えたことだ。
  ドレインの異能と同じくらいのタイミングから彼は姿を現さなくなった。
  もしかしたらドレインの異能と彼に関連性があったんじゃあないかと思ったのはそれから随分あとだった。
  愛情を欲しがっていた兪華の裏返しが、ああいう形で吹き出したのかもしれないと、心理学も何もわからぬ頭で仮説を立ててみた。

「君は今、幸せかい?」
  ある日、青空の下を歩いていたら空からそんな声が降ってきた気がした。
  黒兪華が戻ってきたのだろうかと思ったが、彼の気配はしなかった。
「とっても」
  そうとだけ空に返答した。風が微笑むようにやさしくそよいだ。

(了)